国立の旭川医科大学(北海道旭川市)が付属の旭川医科大学病院の院長を解任した問題で、同大が26日に会見し経緯を説明した。吉田晃敏学長は、新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)が発生した市内の吉田病院に関する不適切な発言は「誤解を与えたのでおわびした」とした一方、コロナ患者受け入れを巡る院長との対立については「(受け入れを許可しなかった)判断は間違っていなかった」と主張した。
同大は25日付で古川博之院長を解任。その理由として、①昨年4月と11月の学内説明会や会議の内容を録音・録画して外部に漏洩(ろうえい)した②同11月のコロナ患者受け入れを巡る吉田学長との協議を報道機関に恣意(しい)的に話して混乱を生じさせた③同12月の学内の会議で信頼回復に取り組むことを確認した後も報道機関に大学の方針と異なる内容を発言し混乱させた、としている。情報漏洩については「複数の証言等から事実を認定した」という。
旭川市では昨年11月6日、重篤な高齢患者が多い吉田病院でコロナ患者の大規模なクラスターが発生。吉田学長は同17日の学内の会議で「コロナを完全になくすためには、あの病院(吉田病院)が完全になくなるしかない、ということ」などと発言したとされる。昨年12月に文春オンラインが報じ、大学は発言の事実を認めた。
記事の後半に会見での一問一答を掲載しています
また古川院長によると、吉田病院の患者1人の受け入れを吉田学長に報告したところ、「許可しない」「受け入れてもいいが、代わりにお前がやめろ」と言われたという。
しかし、旭川医大はこの日の会見で、昨年11月8日と13日時点でコロナ患者の受け入れが可能だったのは集中治療室のほか一部の病室しかなかったとした。吉田学長は受け入れを許可しなかった理由について「過去の経験から、動物的な勘も含めてそういうことにした。その後は病床をコロナ患者受け入れに使えるようになっており、判断は間違っていなかった」と主張。「学長の下に院長がいる。明確な上下関係がある」とも述べ、院長が報道機関の取材に応じたことなどを問題視した。
同大は今月15日の臨時役員会で古川院長に辞任を勧奨し、1週間の期限内に辞任届が出されなかったため、25日付で解任を決めたという。一連の問題に関する吉田学長の責任については、週内にも学長選考会議を開いて検討するという。
一方、古川院長は25日に出したコメントで、役員会の解任決定は「解任相当とする具体的事実が事前に告知されておらず、告知・聴聞の手続きにおいては不適正」「ヒアリングでの質問内容は十分な反論も受け入れず、結論ありきのもの」と批判。情報漏洩の疑いについても否定したといい、「不利益処分を基礎付けるような具体的証拠は何もない」とした。
さらに、一連の問題で文部科学省が旭川医大に事実確認をしているさなかに院長辞任を求めるのは「真実隠しと思わざるを得ない」とし、旭川市の病院の新型コロナ対策で「リーダーシップをとってきた私を解任することは、地域医療をないがしろにしている」とも指摘した。
一方、一連の問題について萩生田光一文科相は26日午前の閣議後会見で「トップの方たちがこういう形で言い争うことそのものが、道民や利用される患者さんたちに不安を与えると思う。冷静な対応を学内でしてもらいたい」と述べた。(井上潜)
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