前回のコラムで私は、「酒席でマスク会食を徹底することは難しい」と書きました。もしあなたが酒好きで、どうしてもお店で飲みたいのなら、最善の選択肢は「1人飲み」でしょう。
私も時々、会社帰りに1人で飲みます。と言っても、飲み屋というより、ファミリーレストランがほとんど。テーブル席に1人でゆったりと座れるし、価格もリーズナブルなのがうれしい。料理2、3品と赤ワインを味わいつつ、本を読んだり、スマホで動画を見たり。1時間足らずの滞在で、仕事の疲れがけっこうリフレッシュされます。
知り合いが店長をやっている鉄板焼きの店に行くこともあります。カウンター越しに店長との会話を楽しむ時は、1人飲みではあるけれど、今はマスク会食。マスクの頻繁な上げ下げが欠かせなくなる。以前はお店が混んでいて店長も忙しく、あまりしゃべれなかったけど、最近はコロナ禍で客が減り、ゆっくり会話ができてしまう。なんとも複雑な心境です。
私が1人でもお店に飲みに行くのは、コロナ禍で苦戦する、こうした飲食店を応援したい気持ちがあるからです。……などと、何かと理由をつけてお酒を飲もうとするのが、酒飲みの
でも、新型コロナウイルスの感染拡大の勢いが止まらず、東京、大阪、京都、兵庫で3度目の緊急事態宣言が発令された今、1人飲みという、ささやかな幸せさえ奪われそうな気配です。たしかに、人流を減らすためには、飲食店などに立ち寄らずにまっすぐ帰宅した方がいい。そもそも、宣言の対象地域の飲食店に対しては、酒類を客に提供しないことが要請されるので、飲もうにも飲めません。
こうなると、酒飲みに残された方法は、家飲み(宅飲み)しかない。しかし、これはこれで問題があります。買い置きしたお酒を、つい、だらだらとたくさん飲み過ぎてしまう。そして飲み過ぎは、病気やけがのリスクを高めてしまうのです。
世界保健機関(WHO)の2018年の報告では、世界の全死亡(2016年)の5.3%に当たる約300万人が、アルコールの有害な使用によって亡くなっています。このうち、がんは12.6%で、感染症が12.9%、心血管疾患が19%、消化器疾患が21.3%。そして最も多いのが、28.7%の「外傷」。つまり、慢性的な飲酒によって健康を害するというよりも、一時的な大量飲酒で極度に酔っ払い、けがをして亡くなるケースが最も多い、と考えられるわけです。
この大量飲酒を誘ってしまう飲食店のサービスの一つが、「飲み放題」。そう、私も体験上、よく分かります。
居酒屋のメニューに、たとえば「1500円で2時間飲み放題!」と書いてあったとします。私は「3杯飲んだら元が取れるから、こっちの方が得だ」と考えて、間違いなく飲み放題を注文してしまう。ところが、根が貧乏性のせいか、30分前のラストオーダーまでに、3杯どころか、できるだけ多くの種類をたくさん注文したくなる。ほとんどの店では、グラスを空けないと次の飲み物を注文できません。まず生ビールを空け、次にワインを空け、日本酒、焼酎、ホッピーセット、ウイスキー、カクテル……。あげくの果てに飲み過ぎて、翌朝は気持ち悪くなり、「ああ、いい年をして、あんなに飲むんじゃなかった」と後悔してしまうのです。
飲み放題だと、飲酒量が普段の2倍弱に増加する、という国内の研究結果もあります。WHOは2009年、「flat rate for unlimited drinking(一定料金での無制限飲酒=飲み放題のこと)」はアルコールの過剰摂取を招くとして、サービス提供の禁止・制限を提言しています。でも、日本ではこうした制限はまったくありません。
そもそも、日本という国はお酒に対して、他の先進諸国に比べるとかなり寛容です。米国では、蒸留酒(ウイスキーやウォッカ、焼酎など)のテレビCMは自主規制していますが、日本では、ウイスキーや焼酎のCMが普通に流れています。健康へのリスクを減らす観点から、これからはわが国も、アルコールに対してもう少し厳しく規制してもいいのではないでしょうか。
からの記事と詳細 ( 健康になりたければ、酒を飲むな! 私はやります2か月禁酒 - 読売新聞 )
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