2021年4月14日(水)
処理水放出決定 「説明足りない」北茨城漁師ら反発 宿泊・飲食業者も困惑
東京電力福島第1原発事故の処理水に関し政府が13日、海洋放出する方針を決めたことを受け、茨城県内の漁師や水産加工業者からは「説明が足りていない」と反発の声が相次いだ。福島県に隣接する北茨城市では、宿泊や飲食関係の事業者からも不安の声が上がり、政府方針への波紋が広がった。
■一番怖い風評
政府が同日午前、方針を正式に決めてから約2時間後、北茨城市大津町の大津漁港では水揚げされたばかりのシラスの競りが始まった。
「正式に決まってしまったか」。早朝からシラス漁で出漁していた女性漁師(72)は残念そうに話し、「本当に困る」と戸惑いの表情を見せた。
原発事故から10年がたってなお、福島県沖での漁ができないなど、影響は色濃く残る。女性は「元に戻ったとは言えないが、ここまでくるのに随分かかった。やっと落ち着いてきたところなのに」と嘆いた。
今回の政府方針について「一番怖いのは風評被害。原発事故後はしばらくの間、シラスを東京に出しても売れなかった」と振り返る。「またその状況に戻ったら困る」と懸念する。
この日の競りで最も多い量のシラスを競り落とした水産加工業、川崎典彦さん(39)は「海洋放出についても補償に関しても、説明が足りているとは思えない」と指摘する。
自身が所属する大津港水産加工業協同組合(同市)に対し、国から海洋放出に関する説明がないことも不安感を高めているという。「北茨城は県境。影響が大きい。福島と同じように対応、説明してほしい」と求めた。
8年前から同漁協で勤務する男性(26)は「海洋放出後も風評被害の影響は出るだろう」と不安そうに話した。
茨城県内の各漁協や県水産試験場では原発事故後、水揚げされた魚介類などの安全性をPRするため、モニタリング検査を続けている。男性は「漁師側も加工業者側も不安。放射性物質検査を通し、消費者に数値で安全性を示していくしかない」と訴えた。
■地元で仕入れ
海洋放出への不安は漁業以外にも広がる。
同市平潟町の「平潟港温泉民宿相模屋」店主、伊藤良一さん(61)は「観光への影響があることは間違いないだろう」と見る。福島第1原発から距離が近い市内で海水浴客が減るのを心配する。
ただ、伊藤さんは「原発事故直後ほどの観光客減少には至らないのではないか」とも見通す。「新型コロナ収束後、客が戻ることを期待したい」
地魚を扱う同市大津町北町の和食料理店「食彩太信(だいしん)」は、魚のほぼ全てを同市の地元漁港から仕入れている。店主の前田賢一さん(45)は、海洋放出となれば「風評被害は出てしまうと思う」と嘆く。「魚を扱う料理屋としてできることは、自分の技術で魚をおいしく食べてもらうことだけ」と心境を語った。
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