「リスクコミュニケーション」の専門家が分析
政府の説明が国民に伝わらない理由を分析します(写真:ブルームバーグ)
「リスクコミュニケーション」という言葉をよく耳にするようになってきた。新型コロナウイルス感染症に関する情報伝達のあり方についてその重要性が再認識されたほか、近年は災害時の情報伝達でも重視されている。しかし、リスクコミュニケーションとは何かと問われると、きちんと回答できる人はそう多くないだろう。
「リスコミ」とは何か、なぜ求められているのか。コロナ禍のケースを軸にしながら、東京都市大学メディア情報学部の広田すみれ教授に尋ねた。
シンプルさと科学的エビデンスの伝達を欠いた政府
この1年あまり、世界はコロナ対策を軸に回り続けた。日本も同様だ。この間、3回の緊急事態宣言が出され、十分な生活補償がないまま、外出自粛や飲食店などの休業要請が間断なく続いた。他方、昨年は「Go Toトラベル」「Go Toイート」が実施されるなど、対策の眼目がどこにあるのか、本当に実効性があるか、判然としない状態が続いてきた。
――この間の日本政府の対応、とくにトップの情報発信をどう見ていましたか。
広田すみれ/東京都市大学メディア情報学部社会メディア学科教授。慶應義塾大学大学院で博士号(社会学)。『心理学が描くリスクの世界 行動的意思決定入門』『リスク学事典』など共著書多数。文部科学省のリスクコミュニケーションモデル形成事業推進会議委員(2014年)、福島医科大学放射線医学県民健康管理センター専門委員会・リスクコミュニケーション評価専門委員会委員など公的職務も多数経験(写真:本人提供)
ひとことで言えば、理解を求めるためのメッセージのシンプルさと政策に関する科学的エビデンスの伝達を欠いていたことに尽きると思います。
例えば、安倍晋三・前首相の昨年3月の会見は感染対策と同時に、細かな経済政策に相当の時間を費やしていました。官僚による事務説明のようで、国家のリーダーが緊急時に国民に向けてする演説としてはふさわしくなかった。
時間も長すぎました。訴えたいことの核心、方向性が見えませんでした。これから何をやるのか、どういう理由(根拠)があるのか、国民に何を求めるのか。もっと国民へ簡潔に語りかけるべきだったと思います。
「専門家会議はさておき、日本政府から出される情報はよくわからない」。これがこの1年あまりの、多くの日本人の実感ではないでしょうか。感染対策については基本、「予防をしっかりお願いしたい」と言うばかりで、政策の意味や理由を語らず、予想される結果も具体的ではなかった。
経済についても同様です。その時々の細かな政策メニューは語られても、経済全体に対するリスクは定量的に説明されなかった印象です。国民の理解を得るはずが、逆に不信感を高めたのではないでしょうか。
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