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Saturday, July 10, 2021

【主張】100人一律不起訴 説明に納得はできるのか - 産経ニュース

検察庁の入居するビル=東京都千代田区(川口良介撮影)
検察庁の入居するビル=東京都千代田区(川口良介撮影)

贈収賄事件は一般的に贈賄側と収賄側がそろって初めて成立する。同様に公職選挙法の買収事件も買収側と被買収側の双方で構成される。買収側は1審で実刑判決を言い渡されたが、被買収の罪で告発された100人は一律不起訴となった。異例の処分に、納得のいく説明は尽くされたか。

元法相で前衆院議員の河井克行被告は、令和元年の参院選広島選挙区をめぐり公選法違反(買収、事前運動)の罪に問われ、「民主主義の根幹である選挙の公正を著しく害した」として東京地裁で懲役3年の実刑判決を受けた。

河井被告は妻の案里氏の当選を目指して地方議員ら100人に計2870万円を配ったとされ、公判で大部分の買収を認めた。その被買収側の100人について、東京地検特捜部は、一律に不起訴処分としたのだ。

特捜部の説明は、受領側はいずれも「受動的な立場」で、「一定の者を選別して起訴することは困難で適切ではないと判断した」というものだった。

だが100人の受領者は地方議員、首長、後援会など立場はさまざまで、受領額も5万円から300万円まで幅広い。複数回にわたって受領した者もいる。「困難」を理由に「選別」を断念することは怠慢のそしりを受けないか。

疑われるのは、河井被告の公判で有罪とするための証言を引き出す事実上の司法取引があったのではないか、ということだ。

特捜部は「何らかの取引や約束した事実は一切ない」と否定しているが、100人一律の不起訴はやはり異様である。

司法取引制度は、検察が証人の刑事責任を追及しないことを約束し、法廷で他人の犯罪について証言する「捜査・公判協力型協議・合意制度」として刑事訴訟法に導入され、平成30年6月に施行された。経済犯罪や薬物銃器犯罪を対象としたもので、公選法違反は対象となっていない。

冤罪(えんざい)を防ぐため「虚偽供述罪」も新設された。証言の証拠採用には司法取引制度を利用したことを法廷で明らかにしなくてはならない。だが、「事実上の司法取引」なるものが存在すれば、これらの手続きは必要とされない。

司法取引を有効な捜査ツールとして定着させるためにも、疑いをもたれてはならない。納得のいく丁寧な説明が必要である。

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