異例で異様な状況だ。 約2週間後に迫った東京五輪が緊急事態宣言下での開催を余儀なくされる。五輪競技のうち1都3県での開催分は無観客で行われる。前代未聞の決定だ。 なぜそうなったのか。菅義偉首相は開催国のトップとして国内外にその理由を説明する責任がある。 8日の記者会見で首相は、感染力の強いインド由来の「デルタ株」拡大を警戒したと緊急事態宣言の発令理由を説明した。一方、感染拡大を許した要因や政治的責任の追及にはまともに答えなかった。国民の懸念や疑問は解消されないままだ。 緊急事態宣言を出すに当たっての国会報告は、政府対策本部長である菅首相でなく事務担当の西村康稔経済再生担当相が行った。 その西村氏は8日の政府対策本部会議後、休業に応じない飲食店との取引停止を酒類販売事業者に要請する意向を表明。これら飲食店の情報を金融機関とも共有し順守を働き掛けてもらうとした。しかし野党や自民党内から「強圧的」との批判を受け金融機関との共有は1日で撤回した。発令前から政府の対応は混乱している。 そもそも、夏休み時期に国民の行動自粛を求めながら五輪は開催する不可解さに首相は正面から答えていない。感染拡大下で五輪は開催する理由や無観客ならよいのか、国民や選手、ボランティアらの安全・安心をどう確保するのかなど、首相が自らの言葉で語るべきことは多い。 ■ ■ 東京の感染拡大は全国に広がり得るという首相の問題意識には同意するとしても、状況が改善しつつある沖縄での宣言延長は、県内各界に想定外との衝撃が走った。 玉城デニー知事は7日夕、まん延防止等重点措置への移行を西村氏に要請した。この直後に政府は沖縄について、まん延防止措置移行でなく緊急事態宣言延長方針を決めるが、西村氏から説明はなかった。8日の政府対策本部後も県に説明はなく、約1時間に及んだ首相会見で沖縄への言及は2回だけ。知事は延長を「報道で知った」という。 感染拡大を抑制するには、県や県民の協力が不可欠だ。県側の求めたまん延防止措置への移行でなく緊急事態宣言延長を選んだ政府の判断に一定の根拠があるとしても、一方的に決定を押しつけるだけでは県民の協力を望むべくもない。明らかに国の失態だ。この点でも首相には県民に対する説明責任がある。 ■ ■ 開催2週間前の無観客開催決定である。高倍率の抽選に一度は当たり、観戦に期待を抱いていた人たちの失望は想像に難くない。国内外の人たちと交流を期待しボランティアに応募した人たちにとっても肩すかしの結果だろう。観客を入れての開催にこだわり決定を遅らせた首相の責任は重いといわざるを得ない。 野党はコロナ対策などで機敏に対応するためとして東京五輪前の臨時国会召集を政府に求めている。当然の要求だ。首相は国会質疑を通じ多くの国民や県民が抱く疑問に答えるべきである。
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