米国通商代表部(USTR)は8月1日、トランプ前政権が1974年通商法301条に基づいて発動した対中追加関税(301条関税)の正当性をめぐる訴訟で、301条関税のうち、いわゆるリスト3とリスト4Aに関する決定について、追加的に説明する文書を米国国際貿易裁判所(CIT)に提出した。
301条関税をめぐる訴訟では、同関税を課された中国原産品を輸入する米国内の事業者が、2018年7月以降4回に分けて発動された301条関税のうち、後半2回に当たるリスト3とリスト4A(注1)は無効として、米国政府を相手取って提訴した。CITは2022年4月、各リストについて当時のパブリックコメントなどで提起された反対や賛同の意見、米国経済への懸念などを勘案した上で、USTRがどう最終決定に至ったのかを説明しきれていないと判断。USTRに対し、301条関税を正当化する根拠を再考するか、追加説明を行うよう命じていた(2022年4月7日記事参照)。
USTRは提出した文書の中で、リスト3とリスト4Aの対象品目について、利害関係者から寄せられたコメント(注2)に基づいて当初提案した内容から特定品目を削除した一方、その他の品目を各リストの対象に含めた理由を説明した。リスト3については、USTRの当初案から輸入額約190億ドル相当の297品目が削除された。これには、中国が主な供給元となっているレアアース、レアメタルのほか、一部の消費者向け電子製品や、中国が米国にとって輸入シェアの9割超を占める化学物質などが含まれる。USTRはこれら品目に関して、301条関税の賦課が中国の不公正な慣行を排除するために実行的または効果的ではないことや、米国の国益に過度な経済的損害を与える可能性があることを考慮し、リストから除外した。一方、最終的にリストに含まれたその他の品目に関しては、利害関係者からのコメントがリストからの削除を決定付ける基準に満たなかったと説明した(注3)。
リスト4Aについては、USTRの当初案から輸入額約20億7,000万ドル相当の25品目が削除された。USTRはこれら品目のうち重要鉱物・化学物質については、経済・国家安全保障上の理由でリストから除外した。その他の多くの品目については、大統領が指示した措置の規模を満たすため、リストから削除する余地は限られていたと主張した。
米国内の事業者による訴訟で原告側は、中国政府の報復関税はリスト3とリスト4Aの発動理由になり得ないとして、301条関税の違法性を主張している。これに対して、USTRは、中国の報復関税は301条関税の発動原因となった同国による不当な知財政策を維持するための行為であり、リスト3とリスト4Aの発動理由になり得ると訴えた。
(注1)2018年9月に発動した輸入額約2,000億ドル相当の5,745品目に対する追加関税(リスト3)と、2019年9月発動の輸入額約1,100億ドル相当の3,243品目(リスト4A)の2回。リスト3は当初10%だった追加関税率が2019年5月に25%へ引き上げられ、リスト4Aは当初15%だった追加関税率が2020年2月に7.5%へ引き下げられ、いずれもそのまま現在に至っている。
(注2)USTRの提出文書によると、リスト3に対しては6,000件超、リスト4Aには3,000件近くのコメントが提出された。これら9,000件超のコメントのうち、ほとんど(約95%)は特定品目に関わるものだった。
(注3)具体的には、繊維製品の原材料や特定の化学物質をリストから削除するよう求めるコメントがあったが、それらのコメントは、当該品目に対する301条関税の賦課が中国の不公正な慣行を排除するために実行的または効果的ではないことなどを証明できていなかったと説明した。加えて、大統領が指示した措置の規模を満たすには、コメントの品目を全て削除することはできなかったと主張した。
(甲斐野裕之)
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