なぜ初めから明らかにしなかったのか。国葬に疑問を持つ国民が多いのに、説明を小出しにする。その姿勢が不信を増幅させていることを、岸田文雄首相は自覚すべきだ。
政府はきのう、安倍晋三元首相の国葬にかかる警備費が8億円程度、外国要人の接遇費は6億円程度になるとの概算を公表した。総額は16億6千万円の見込みという。
政府がそれ以前に説明した費用は約2億5千万円で、警備費と接遇費は含まれていなかった。要人の数が確定していないため、国葬前には明らかにできないとしていた。一転して総額は当初の6倍超に膨らんだ。
概算はその気になればすぐに出せる数字である。国葬反対論を横目に、少しでも費用を小さく見せようとする意図を疑わざるを得ない。
元首相の国葬は異例で、費用の全額を国が負担する。主権者である国民にその規模と具体的な使途を説明することは当然であり、けしてないがしろにしてはならない。
政府の説明不足への批判が高まり、内閣支持率にも影響している。野党からも概算費用の提示を求められ、追い込まれた末に公表した。これが岸田首相が繰り返し口にする「丁寧な説明」なのか。
国葬費用の概算は確かに少なからぬ額だが、問題は金額の多寡ではない。
弔問外交の舞台にもなる元首相の葬儀である。選挙運動中に銃撃される未曽有の事件が起きたことからも、警備の漏れは絶対に許されない。要人には礼を失することのない接遇が必要だ。
仮に国葬ではなく、過去の首相経験者で通例だった内閣と自民党の合同葬であったとしても国費の支出は生じる。
政府は最初から経費が必要な事情を国民に説明し、理解を求めればよかった。それをせず、国会にさえ説明せずに済ませようとしたことに不信の源がある。
警備や接遇の費用に関し、首相は先週の記者会見で「既定予算の範囲内で対応する」との論法で言明を避けた。計上された予算であっても説明を欠いてはならない。
先に示されていた2億5千万円は予備費を充てる。閣議決定だけで支出できる政府にとって都合のいい財源で、国会審議を必要としない。
このような政府の独断的姿勢は、故人をしのぶ雰囲気の醸成に水を差すだけである。静かに安倍氏を送りたい人の心情も損ないかねない。
まだ積算根拠が明確になっていないため、実際の国葬費用が概算内に収まるのか疑念は拭えない。
政府は週内にも行われる国会の閉会中審査までに明らかにし、妥当な支出かどうかの議論を求めるべきだ。
岸田首相は自ら国会で説明する意思を示した。相当な覚悟があるのだろう。国葬のあらゆる疑問を解く責務を果たしてもらいたい。費用の問題はその一部に過ぎない。
からの記事と詳細 ( 国葬の費用 不信高める小出しの説明 - 西日本新聞 )
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