安倍晋三元首相の国葬に関し、岸田文雄首相が8日にも実施される国会の閉会中審査に出席する意向を表明したことが、自民党内で波紋を呼んでいる。世論を二分する国葬について、首相が自らの言葉で理解を求めることに異論はないが、国会内での事前調整を飛び越して行政府の長としての一存で「国会出席」を決めることになれば、三権分立に基づく「議院内閣制」の否定につながりかねないとの懸念からだ。根回し不足は「政権の焦りのあらわれ」との指摘もある。
「閉会中審査で、私自身が出席し、テレビ入りで国葬に関する私の決断について質疑にお答えする機会をいただきたい」。首相は8月31日の記者会見で、そう宣言した。
衆参両院の議院運営委員会で実施される閉会中審査への首相の出席は、立憲民主党など野党側が要求していた。国葬実施を巡っては、毎日新聞が8月に実施した世論調査で「反対」との回答が53%にのぼり「賛成」の30%を大きく上回るなど、世論の理解は広がっていない。こうした現状に、自民党内でも「首相の出席は不可避」との見方が出ていた。
ただ、会見での首相の表明には、党内から戸惑いや不満の声が相次いでいる。行政府の長である首相は立法府(国会)との立場の違いを尊重し、議事進行に関しては国会での決定に従う――とのこれまでの「建前」を壊し、一方的に出席を宣言したためだ。首相が会見で繰り返した「テレビ入り」は、NHKによる審議の生中継を意味する国会用語だが、これも本来はNHKとの調整を経て委員長の決裁で決定するものだ。
会見後、自民国対幹部は、「あんな表明の仕方をするなんて全然聞いていない」と絶句。ベテラン議員は「首相は国会を軽視しているか、国会のことを何も知らないかのどちらかだ」と憤った。
与野党の国対担当者は現在、野党が求める物価高対策など別のテーマでの閉会中審査や早期の臨時国会召集を巡っても非公式の交渉を続けている。自民国対関係者は「『首相の出席』を交渉材料に、他の分野で野党の譲歩を引き出すこともできたが、首相の表明で難しくなった」と嘆息。立憲幹部は「もう岸田さんが国対委員長でいいのでは」と皮肉った。
そもそも政権トップが国会閉会中に委員会で野党の質問に答えるのは異例。首相周辺は「国葬実施を決めた自身の責任として、自らの口で説明したかった」と前のめりな姿勢に理解を求めたが、自民党幹部は「今後、野党は繰り返し首相の出席を要求するだろう。あしき前例にならなければいいが……」と話した。【李舜、東久保逸夫】
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