新型コロナウイルスの感染拡大で、受験生向けの大規模な高校進学説明会が中止となるなど、各地で受験戦線に影響が出ている。例年は夏に学校見学を通じて進路を絞り込む生徒が多く、志望校選びは待ったなしの状況。説明会をオンラインによる開催に切り替えたり、時期をずらして開いたりと工夫されているが、保護者や学校関係者らは「子供たちに不利な状況にならないようにしたい」とやきもきしている。(木ノ下めぐみ)
「進路情報提供したい」
「子供たちが進むべき道を自分で選び、未来を切り開くため、必要な情報をできる限り提供したい」
8月30日に大阪市港区や浪速区など6区のPTA協議会が合同で初開催したオンライン高校説明会。宮本隆司・港区PTA協議会会長が参加者に動画配信で呼び掛けた。
例年は区ごとに地域の高校が一堂に会する説明会を企画するが2020年は困難に。毎年の夏休みに大阪府教育庁が開催し、19年度は約3万人が訪れた公立高進学フェアの中止も追い打ちをかけた。「志望校が定まらない子が多いこの時期、複数校の情報を一度に得られる説明会は意義深い」と宮本会長。「中止ではなく、集まらなくてもできることを保護者として実施したい」と企画の意図を打ち明けた。
事前申し込みには約700人が登録。府内の公立高、私立高計44校が参加し、学校紹介動画の配信や、希望者と各校をテレビ電話でつなぐ個別相談を行った。志望校が絞り込めていない長女に代わり動画を見ていた大阪市福島区の高原朝子さん(41)は「コロナで学校見学もしづらく、どうなるか不安だったが、初めて知れた学校もあり、選択肢が広がった」と安心した様子で話した。
説明会に参加した府立港高校(大阪市港区)の小畑龍業教頭(44)は「コロナで先が見えない中、オンラインは今後活用する必要があり、今回の参加経験を生かしたい」と話す。ただ、「学校の雰囲気など実際に足を運ばないと分からないこともある」とし、学校で行う説明会も座席の間隔をあけるといった感染予防対策をしたうえで9月以降に実施していく予定だ。
府教育庁によると、中止となった進学フェアは特設サイトで各校の情報発信を行う形に変更し、各校が個別に開く説明会はおおむね例年通り実施する。当初は「完璧な感染予防はできない」と中止する意向の高校もあったというが、「受験生が高校を見学できる数少ない機会」として、全校実施にこぎつけた。
全公立校を動画で紹介
一方、学校側の判断で説明会の20年度中止を受け入れたのは群馬県教育委員会。今夏は授業日数確保のため夏休みが短縮され、夏の学校見学を9月以降にずらすが、見学希望が殺到しがちな大規模校や人気校で十分な感染予防対策を取れないなどと判断した17校については説明会の全面中止を認めた。
代替案として20年8月上旬までに21年度の生徒募集を行う公立校64校全校が紹介動画の「オンライン学校説明会」を作成し、Webサイトで配信。受験生からは「動画は繰り返し見ることができ、見学では数校しか情報を得られないが、数多くの高校を見られる」など好評だったという。担当者は「21年度以降もオンラインの取り組みを考えたい」としている。
このような状況について、文部科学省の担当者は「不特定多数の人が集まるイベントは感染症対策が難しく中止する動きは致し方ない」と理解を示す一方、「受験生やその保護者にとって必要な情報を各校で工夫して発信し、引き続き不安の払拭に努めてもらいたい」と話した。
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