菅内閣発足から三カ月がたった。滑り出しは順調だったが、新型コロナウイルスの感染拡大は止められず、内閣支持率は急落した。議論と説明を尽くす姿勢の欠如も政権不信に拍車をかけている。
菅義偉首相は「国民のために働く内閣をつくりたい」と述べていた。安倍晋三前政権のように強い発信力でアピールするのではなく、眼前の懸案に地道に取り組み、実績を積み重ねたいということだったのだろう。
しかし、菅内閣が懸案処理に力を発揮できたかという問いには、残念ながら否定的に答えざるを得ない。理由は新型コロナの感染拡大だ。
菅氏は初の所信表明演説で、新型コロナの感染拡大と経済低迷を「国難」と位置付け「国民の命と健康を守り抜く」と強調したものの、感染拡大の現状を見る限り、対応が的確だったとは言い難い。
政府の対策分科会は観光支援事業GoToトラベルを見直すよう再三求めてきたにもかかわらず、首相は「トラベルが感染を広げている証拠はない」と拒否。年末年始に限って全国での一斉停止をようやく決めたのは十四日だった。
そこからうかがえるのは、自らの考えに固執し、幅広く意見を聞いて議論を重ねるとともに、国民への説明を尽くすという民主主義の政治プロセスの欠如である。
日本学術会議推薦の会員候補のうち六人の任命を拒んだ問題も同様だ。首相の任命を形式的とし、裁量を認めない従来の法解釈の変更に当たるが、菅氏は「総合的、俯瞰(ふかん)的な活動を確保する観点から判断した」と述べるだけで、国会での詳細な説明を拒んできた。
「桜を見る会」前日、安倍氏の後援会が主催した夕食会での会費補填(ほてん)問題や、西川公也、吉川貴盛両元農相が鶏卵大手から現金を受領した疑惑は国会議員の「政治とカネ」に関わる問題であり、自民党総裁としても真相解明に努めるべきだが、国会での説明を拒み、関係者の国会招致にも消極的だ。
菅氏は十一日にインターネット番組で「ガースーです」と自己紹介したことや、GoToトラベルの全国一斉停止を表明した十四日夜に大人数で会食したことが批判されている。それら自体、適切とはいえないが、より深刻なことは、秘書官ら周囲に止める人がいなかったことだろう。
菅氏は官房長官時代から人事権によって官僚を動かす政治手法を駆使してきた。それが菅氏に進言できない空気をまん延させているとしたら、問題はより深刻だ。
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