[視点]
辺野古新基地は、米海兵隊だけでなく陸上自衛隊も使う基地だった。明らかになったトップ同士の極秘合意は、「普天間飛行場の代替施設」という従来の政府説明を根底から覆す。新基地は両者一体化の中核拠点となり、その完成は沖縄が将来にわたって要塞(ようさい)として利用される事態に道を開く。(編集委員・阿部岳)
常駐が極秘合意された水陸機動団は、オスプレイが使う滑走路に加え、水陸両用車が海自輸送艦に乗り込む岸壁や、上陸訓練用の砂浜を必要とする。これら全てを兼ね備える辺野古新基地とキャンプ・シュワブは、軍事的には絶好の配備先と考えられた。
陸に囲まれた普天間では望めない辺野古の環境が、「日米共同使用の最新鋭基地」化を招いた。海兵隊の航空部隊だけが常駐する普天間の「代替施設」だとこれ以上呼び続けるのは、事実から目を背けるに等しい。
政府が1997年に発表した計画は海兵隊が使わなくなった時は撤去できる「海上ヘリポート」だった。埋め立ての恒久基地に変わったのが2005~06年の米軍再編。さらに今回、自国部隊である陸自の常駐合意が明らかになった。
今後、国際情勢の変化で海兵隊が撤退する日が来ても陸自はとどまり、新基地は恒久的に使われる可能性が高い。しかし、沖縄の反発を恐れる政府は一切説明していない。
政府関係者によると、計画は在日米海兵隊だけでなく本国の米政府も了承した上で合意されている。一時凍結されてはいるが、日本側の一存で撤回できる段階ではなく、政治環境が整えばいつでも動きだすことになる。ひた隠しにされた海兵隊オスプレイの配備と同様、ある日突然発表されるだろう。
安倍・菅政権は軟弱地盤などの技術的困難、財政難下の巨額費用にも構わず、新基地建設に突き進んできた。政府関係者は、陸自に使わせるために無理を重ねたというより、建設を強行できるとの政権中枢の自信が逆に陸自の常駐計画を後押しした、と証言する。
日米両政府は1990年代から沖縄の米軍基地の共同使用を追求してきた。陸自と海兵隊が新基地で同居し、日常的に調整と共同訓練を繰り返すようになれば、2015年の安保法制で進んだ軍事一体化はさらに新たな段階に入る。自衛隊と米軍は共にメリットが大きいと判断している。
沖縄にとってはどうか。「国防の最前線」と位置付けられ、要塞化された先に、沖縄戦があった。新基地の完成と陸自常駐計画の実行を許すかどうかは、歴史の分岐点になる。
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