筆者はイカが大好きで、日ごろからイカの情報を収集しています。
そんな私にぴったりの日本酒があると友人が教えてくれたのが、石川県の酒蔵、数馬酒造の「竹葉 いか純米」。
「いか」純米??
▲「竹葉(ちくは) いか純米」(1,870円) 写真提供/数馬酒造
確かにイカと日本酒は定番の組み合わせだけれど、イカの名を冠したお酒となると前代未聞です。まさかイカが入っていたり……するのかな?
取り寄せておそるおそる飲んでみると、その美味しさに驚きました。軽く調べてみたところ、名前だけではなく、原材料や造り方にも並々ならぬこだわりが込められたお酒であるようです。
今回はこの「いか純米」をさらに深く知るべく、数馬酒造の広報担当、蔵さんにオンラインでお話を伺いました。
能登を活性化させるために生まれたお酒
──いきなりですが、「いか純米」ってかなり変わった名前ですよね。友人にこのお酒を紹介すると、「イカが入ってるの?」と聞かれたり、ネタ商品だと勘違いされたりすることも正直多くて。
蔵さん(以下敬称略):ネット上でも変わった名前のお酒として話題になりました。「イカのエキスが入っているんですか?」というご質問はよくいただきますが、一滴も入っておりません! お酒に少しとろみが感じられるので、それをイカエキス由来だと思われるお客様もいらっしゃるようです。
──やはりイカは入っていないんですね(笑)。では何をもって「いか」純米なのでしょう。詳しく教えていただけますか。
蔵:弊社は地元である能登の食材を使って、地域資源を最大限に活用した酒造りを行いたいという想いがあります。そこで、地元の食材と合わせたお酒を造るというテーマで、「地域食材特化シリーズ」というお酒を造りました。
▲石川県の能登にある数馬酒造の酒蔵。海辺の酒蔵っていいですね 写真提供/数馬酒造
──なるほど。そのシリーズのひとつが「いか純米」ということでしょうか。
蔵:はい。「竹葉 能登牛純米(のとうしじゅんまい)」というのが第一弾で、第二弾が「いか純米」です。他にも牡蠣をテーマに造った「Chikuha Oyster」があります。2021年11月には、ジビエをテーマに造った「竹葉 gibier純米」を発売予定です。
──「いか純米」だけが特別に尖ったお酒なのかと思っていたら、他にも面白そうなお酒をいろいろ造っていらっしゃるんですね! どれも気になります。テーマの食材と一緒に取り寄せたい……。
蔵:「地域食材特化シリーズ」は、単に食材との相性が良いというだけではないんです。例えば「竹葉 gibier純米」は、野生生物の命に感謝し、田畑や農作物、美しい田園風景などの地域資源を守るために開発したお酒です。
醸造を担当した蔵人自身も狩猟を行うジビエハンター。また、狩猟や革製品作りやジビエ料理普及の活動を行う石川県の団体「狩女(かりじょ)の会」とも連携し、狩猟に関する最新情報提供やジビエの提供とご協力いただきました。
さらに、能登でイタリア料理店を営むシェフを招き、ジビエ料理との試飲を重ね、ジビエに寄り添う日本酒の味わいを追究しました。
──美味しいだけじゃない、地域のことを考えたお酒なんですね。「いか純米」にはどんなストーリーがあるんでしょうか。
蔵:弊社のある能登町にはイカの水揚げで有名な小木港があって、日本三大イカ漁港のひとつに数えられるほど、イカ漁が盛んなんです。その小木地区の地域活性化をするプロジェクトの一環として、小木に東京大学の学生さんが滞在したことが、「いか純米」誕生のきっかけとなりました。
──小木の町おこし的な意味合いがあるんですね。ちなみにイカ好きとして、小木にはいつか行ってみたいと思っていました。小木といえば釣ったイカを船上で急速冷凍した「船凍イカ」が有名ですよね。
▲小木産ではないですが、船凍イカのイメージ。船上で急速冷凍することで鮮度を閉じ込めることができます
蔵:よくご存知で! そんな地元の誇れる名産品である小木イカを生かして、一年中楽しめる商品を作れないかと思案していた東京大学の学生さんたちとの縁が結ばれ、イカに合うお酒「いか純米」の商品開発へ至ったんです。
2種類の日本酒をブレンドすることで特別な味わいに
──イカに合うお酒の味は、どのように決めていったのでしょう。
蔵:官能評価という人の五感を使った評価方法で、イカとお酒の相性を試していきました。小木地区の方々にイカ料理を用意していただいたんです。お酒とイカ料理を実際に食べ合わせながら、どのお酒が合うかというマッチングをしていきました。
──話だけ聞くとなんだか楽しそうなのですが、実際は味を決めなくてはいけないので大変ですよね。どれくらいの種類のお酒を比べたんでしょうか。
蔵:試飲したお酒の種類は、ブレンドも含めて15種類ほどです。最初に5種類くらいのお酒を利き酒して、イカに合う土台となるお酒を決めました。その後、様々な酒質のお酒をブレンド比率を変えながら試していきました。学生さんたちとともに、こっちのイカ料理には合うけど、こっちはちょっと違う……という感じです。
▲東京大学の学生さんと酒質設計をする様子 写真提供/数馬酒造
──イカの料理法によっても合うお酒が変わってきそうですね。
蔵:そうですね。お刺身、焼きイカ、イカの甘酢漬け、塩辛数種、イカ飯など色々と試しましたが、基本的にはお刺身のイカのねっとりとした甘みに合わせる味わいの方向性で進めていきました。
──先ほど「ブレンド」という言葉が出てきましたが、違うお酒を混ぜるということですか。
蔵:コーヒーなどでも数種類の豆を配合することがありますよね。そんな感じです。近年では「アッサンブラージュ」とも呼ばれ、新しい日本酒造りに挑戦する酒蔵も出てきています。
あまり公表はしてないのですが、いか純米は9:1の割合で2種類のお酒をブレンドしています。
──そうなんですね! ブレンド日本酒、はじめて飲んだかもしれません。酒米の情報を見たんですけど、五百万石が90%、石川門が10%となっていますよね。もしかしてこれがブレンドの9割と1割に対応しているんでしょうか。
蔵:その通りです。それぞれ造ったお酒を混ぜることで、1種類では出せない味わいを実現しています。「いか純米」を飲んだお客様から、「どうしてこんなにとろみが出るの?」と聞かれたりしますが、それは熟成させた生酒(※火入れしていないお酒)の効果なんです。
──たしかに。舌に残るようなとろっとした感じがありますね。五百万石を使ったお酒って後味がスッと切れるイメージでしたが、「いか純米」は後口が味わい深いですね。これが生酒の効果なのか~。
米、水、酵母まで能登産にこだわった原材料
▲数馬酒造の外観 写真提供/数馬酒造
──「いか純米」を造るにあたって、他にもこだわったところなどあるのでしょうか。
蔵:「いか純米」だけでなく弊社の酒造り全体に言えることなのですが、米、水、酵母などの原材料がすべて能登産であることを目指しています。特にお米は今まで一部他県のお米を使わせていただいていたのですが、2020年の酒造りから能登産100%を実現できるようになりました。
「いか純米」にも使われている五百万石を作ってくれているのが「ゆめうらら」さんという農家さんなんですが、酒米の種類によって肥料を変える「専用肥料」というのを開発されています。
──酒米専用の肥料まで開発とはすごいですね。お酒の味にどう反映されるのか気になる……。
蔵:私も聞いたときはとっても驚きました。「数馬酒造専用肥料です~」とおっしゃっていました。今期(2020年)からはその専用肥料を使ったお米で仕込み始めているんですよ。
▲浸漬した米を蒸す蒸米(じょうまい)の様子 写真提供/数馬酒造
──それは出来栄えが楽しみですね。そういえば、精米もすべて数馬酒造さんで行っているそうですね。
蔵:そうなんです。自社精米する酒蔵というのはすごく珍しく、石川県内でも数社、能登だと唯一だと思います。お米の状態を自分たちで確認して磨き具合を調整したり、仕込む際に「お米がこうだったから、麹(こうじ)造りはここに気を付けようか」と調整したりできます。
それから、お米を生産者さんから直接弊社へ納入いただくことで、生産者さんも弊社も同じ能登エリアなので移動距離が少なく、輸送する際にかかるCO2の削減にもつながります。
持続可能なものづくりを実現するために、こうした取り組みも行っています。
──すべての材料を能登産で、というのはそういう意味もあったんですね。
蔵:はい。お米だけでなく水も能登産を使っています。仕込み水は2種類あって、ひとつは地元の山の湧き水です。弊社の多くのお酒はこちらの水を使っています。
もうひとつは能登の海洋深層水。「いか純米」はこの海洋深層水で仕込んでいるんです。小木漁港に海洋深層水を作る施設があるので、この水をもっと普及させたいという狙いもあります。「いか純米」は小木のイカ、小木漁港のお酒だから、小木で採れる水を使いたいというのが始まりです。
──小木の海で獲れたイカに、小木の海水が合わないはずないですものね。
蔵:それだけじゃないんです。「いか純米」は酵母も能登産。能登の海岸に打ち寄せられた海藻から酵母を抽出して、その酵母でお酒を醸(かも)しています。
▲醪(もろみ)の酒質を分析する様子 写真提供/数馬酒造
──酵母まで能登産とは! 酵母って海藻からもできるんですね。
蔵:東京海洋大学の教授、石川県立大学、そして弊社の共同研究で開発した酵母です。正式には「Misaki酵母」という名前なんですが、この酵母で醸したお酒はリンゴ酸がたくさん含まれて爽やかな風味になるんです。先日新酒が発売となった「竹葉 生酛(きもと)純米 奥能登」というお酒にも使っているんですよ。
──同じ酵母を使ったお酒ということで、「いか純米」と「奥能登」を飲み比べても面白そうですね。
チャレンジ精神旺盛な若い醸造社員が切磋琢磨
──原材料以外にも、酒造りのこだわりや特徴など何かありますか。
蔵:酒の造り手である弊社の醸造社員が若い、というのは特徴のひとつかもしれません。みなさん20代後半から30代後半です。
──わ、若い! 最近は日本酒造りの職人さんが高齢化で減少しているなんて話も聞きますが、数馬酒造さんはどうして若い蔵人さんを維持できるんでしょうか。
蔵:働きやすい環境を整えているからじゃないかと思います。これまで蔵人さんの生活といえば、酒造りをする半年間はずっと蔵に泊まり込み、昼も夜もなく麹や醪(もろみ)の面倒を見るというものでした。しかしそれでは若い人は居つかないだろうと。蔵人さんの泊まり込みや深夜早朝の作業を一切なくし、事務職の社員と同じよう朝来て夕方に帰れるようにしました。
──すごい。それなら子育てしているような若い人でも働けそうですね。でもそれって結構大変なことなんじゃないですか? 泊まり込みだって今まで好きでやっていたわけじゃなくて、必要だからやっていたわけですよね。
蔵:そうですね。ひとつは醸造社員が通年雇用の社員となっていたことが背景にあります。年間を通して計画的に作業が行えるので、酒造りの期間中の業務がひっ迫しないよう出来る限り平準化した仕込みスケジュールに見直すことができました。
もうひとつは泊まり込みをしなくて済む仕組みを作るための設備投資をしたことです。例えば、以前は蔵人さんが夜中に何度も醪の温度を確認して調整をしていたんですが、温度センサーを導入して、いつでもどこでもスマホで温度を見られるようにしました。あらかじめ設定した温度を維持することもできます。他にも機械やAIなどの技術を使って省力化したり。これも持続可能なものづくりの一環なんです。働きやすくないと人のほうが続いていきません。
▲醪をかき混ぜる「かい入れ」という作業。力がいりそうです 写真提供/数馬酒造
──ここにも「持続可能」というキーワードが入ってくるんですね。蔵人さんの仕事も持続可能に、と。
蔵:おかげさまで、辞める人はいなくて蔵人さんは増えています。
──増えてるってことはすごく居心地がいい職場なんですね。
蔵:みなさん楽しそうです。同世代なので学生さんみたいにわいわいしていることもありますよ。弊社は従来の季節雇用の杜氏制度ではなく、醸造責任者を中心に、みんなで相談して方向性などを決めています。
▲蒸し暑い製麹(せいぎく)室で麹造りを行う様子 写真提供/数馬酒造
──杜氏さん、いないんですか! 数馬酒造さんは創業150年を越えている歴史ある蔵元ですよね。杜氏制度を廃止するなんて思いきった決断のように思いますが。
蔵:季節雇用の杜氏制度がなくなったころ、まだ私は入社していなかったのでその時の雰囲気などは分からないのですが、既成概念に捉われず、手を上げてくれた醸造社員を信じて一緒に成長していこうと決意したと聞いています。10年前に今の社長になって新しい風が吹きました。チャレンジする人を応援したいという社風がすごくあるんです。ベテランから若手まで、醸造社員が一人一つタンクを担当して好きなようにお酒を仕込む責任醸造という制度ができまして。醸造社員のモチベーションにもつながるし、新しいアイディアがそこから生まれることもあります。
──なるほど。働きやすく、チャレンジしやすい環境で造られるお酒が、美味しくないはずないですね!
能登だけでなく世界で愛されるお酒を目指す
──数馬酒造さんの酒造りについて、よく分かりました。「いか純米」に話を戻しますが、発売してみて反響はいかがでしたか。
蔵:ありがたいことに大きな反響をいただきまして、発売初年度はすぐに完売してしまいました。特に地元の方がとても気に入ってくださって、小木漁協さんが「いか純米」を漁協公認酒にしてくださったんです。小木漁協では毎年5月にイカのお祭り「イカす会」というイベントが開かれているんですが、そこでも「いか純米」を販売させていただいています。
──「イカす会」! イカのつかみ取りとか釣りとか、イカ釣り漁船の見学なんかをやる大規模なお祭りですよね。2020年は新型コロナウイルスの影響で中止になり残念でした。祭りとくればお酒、ましてイカのお祭りなんですから、「いか純米」にピッタリですね。
蔵:はい、皆さん「いか純米」を買ってその辺で宴会を始めてしまうんです(笑)。「いか純米」は四合瓶のみの販売ですが、一升瓶を出してほしいという声もあるくらいで。
──小木の資源を活用して造ったお酒が、小木の方々に愛されるってとても嬉しいことですよね。
蔵:そうですね。また、小木だけでなく、県内外や国外からもご評価をいただいています。特に2020年では「Kura Master」というフランスで開催される日本酒コンクールで、純米酒部門の金賞をいただきました。海外からも美味しいと認めていただけて嬉しいです。
どんな温度でも美味しく、イカ以外の料理にも合わせられる万能酒
──「いか純米」という名前を聞いて、どんな変わった味がするんだろうと構えていたんですが、飲んでみていい意味で裏切られました。甘くて優しい香りでしっかり米の味がして、どんな人でも美味しく飲める味ですよね。
蔵:甘みと酸味とうま味のバランスが良い仕上がりになっていると思います。ですからバリエーション豊かなイカ料理にも合わせやすくて、万能なお酒だね、なんて言われます。
──お酒と料理の組み合わせっていつも悩んじゃうんですけど、「いか純米」ならあまり神経質にならずに合わせられそうです。イカ以外とも合わせて大丈夫ですか?
蔵:大丈夫ですよ! シェフの方に試飲してもらい、料理との相性をみていただいたことがあるんですが、ブイヤベースの風味と「いか純米」がとても相性が良かったので、魚介類全般に合わせられるだろうとお墨付きをいただきました。実はお肉にも合います。
──肉もいけるんですか!?
蔵:そうなんですよ。バーベキューとかに持って行くのにもいいんです。常温で保存できるので、持ち運びに便利ですし、冷酒、常温、熱燗まで、どの温度でも楽しめるので、冷やして持って行って温度変化を楽しむという方もいらっしゃいます。
──たしかに温度帯によって味わいががらりと変わるお酒だな、という印象です。温度が変われば合う料理も変わってきますよね。
蔵:天ぷらなどには冷酒、お刺身には常温からぬる燗、煮つけには熱燗などがおすすめですね。でもお好きなように自由に組み合わせて飲んでいただければと思います。
蔵元おすすめのペアリングとは?
とはいえ、やっぱり蔵元おすすめのペアリングは知っておきたいもの。これぞ、という組み合わせを聞きました。
おすすめのペアリング
- イカのお刺身×常温orぬる燗 ねっとりとしたイカの甘みに、温度帯をあげたお酒のとろりとした甘み、軽快な酸が調和します。
- イカの塩辛マッシュポテト×常温 数馬酒造の女将おすすめの組み合わせで、お酒と塩辛と芋の一体感が絶妙です。
- イカの天ぷら×冷酒 お酒の酸味と、香ばしい揚げ物との温度帯のコントラストが楽しめます。
- 干しホタルイカ×燗酒 お酒の酸味がホタルイカのくせのある味わいと調和して、盃を進めます。
- イカのカルパッチョ×冷酒 冷やすとオリーブオイルのフルーティさとイカの甘みがよりはっきりと味わえます。
- イカめし×温度帯問わず もち米とイカの甘みが酒の旨みに相乗します。
蔵:他にも、数馬酒造のSNSのフォロワーの方からは、「トマトベースのイタリアンっぽいイカ料理と合わせるとすごく美味しかった」というお声もいただきました。
──トマト! 確かに「いか純米」の爽やかな酸味とマッチしそうです。本当になんでも合わせやすいお酒なんですね。自分なりの組み合わせを試してみるのも楽しそうです。
さてインタビューの途中ですが、蔵さんから伺った料理の中から4種類を実際に作って、冷酒、常温、燗酒とペアリングしてみたのでレポートいたします。
まずはスルメイカのお刺身と常温の「いか純米」。せっかくなので船凍イカを用意しました。
▲生とは違う美味しさがある船凍イカ
船凍イカのねっとりと舌に絡みつくような甘み、旨味と、お酒の豊かな米の旨味が一つに溶け合ってとても幸せです。蔵さんによると、「船凍イカの刺身に合わせてお酒をチューニングした」そうで、抜群の相性。船凍イカってこんなに美味しかったんだと感激したほど、「いか純米」がイカの良さを引き立ててくれます。お酒がイカを引き立てる、イカがお酒を引き立てる……「いか純米」を取り寄せたなら、絶対にこの組み合わせは外せないですね。
同じ常温の「いか純米」に、次はイカの塩辛と合わせてみましょう。ただの塩辛ではなく、塩辛マッシュポテトという変わり種です。これは数馬酒造の女将で、国際唎酒師でもある数馬しほりさんおすすめの食べ方だそう。
▲塩辛とポテトを別添えにしましたが、最初から混ぜたほうがいいかも
マッシュポテトと塩辛を一緒に口に含むと、塩辛の尖った塩気が芋に包み込まれて大変食べやすいです。そこへ「いか純米」を流し込むと、お酒と塩辛と芋が口の中でなめらかに混ざり合い、旨味の一体感がすごい。「いか純米」が甘すぎないので、塩辛のような癖のあるナマモノでも受け止めてくれます。アレンジとして、ポテトサラダのハムを塩辛に変えて作っても美味しいそうです。
次は冷酒に行ってみましょうか。「いか純米」の冷酒には香ばしいものが合うと伺ったので、冷凍庫にあったカミナリイカを天ぷらにしてみました。
▲肉厚なカミナリイカはほどよい甘みとやわらかさ
熱々の天ぷらにきゅっと冷やしたお酒が合わないわけはないですね。衣の香ばしさと鼻に抜けるお酒の爽やかな香り、酸味がちょうどいい。常温と比べて冷酒は後口のキレがよく、天ぷらのカミナリイカのあっさりした後味とマッチします。
最後は燗酒。炭をおこして干しホタルイカを用意、「いか純米」は45度くらいのぬる燗にします。
▲最近買ったミニ七輪を自慢したいわけではありません
燗をつけたら、口当たりがふわっと軽くなりました。実はホタルイカの素干しに一時期ハマりすぎて近頃は食傷気味だったのですが、「いか純米」と合わせると濃い肝の味をお酒の酸味がスッと切ってくれるので、飽きることなく食べられます。
「いか純米」は本当にどんなイカ料理も受け止めてくれる、懐の深いお酒でした。次はイカ以外の食材とペアリングしてみたいですね。
「いか純米」の製造量は年間2,000本
──これだけ「いか純米」のことを知ったら、みんな飲みたくなると思います。私は通販で購入しましたが、直接買いたい場合は能登以外でも手に入るんでしょうか。
蔵:はい、全国でお取り扱いいただいております。特に流通限定酒というわけではないので、お取引のある酒販店さんであればご購入できると思います。ただそれほど数が多いわけではないので……。
──たくさんは造られていないんですね。
蔵:小さい蔵なので、造る量に限りがあります。「いか純米」は年間2,000本くらいですね。12月頃に新酒が出て、例年造った分は売り切れています。
──12月くらいに新酒が出るってことは夏くらいには売り切れちゃいますかね。
蔵:年にもよりますけど、そうですね。Kura Masterの受賞を受けて、2021年はもう少し多く提供できるよう造っています。2021年に出ている「いか純米」はすべて2020年の造りの新酒なので、ぜひ手に取っていただきたいです。
能登の豊かな自然と人に醸されたお酒、「いか純米」。今は遠い能登に思いを馳せながら自宅で飲んでいるばかりですが、近いうちに能登へ足を運びたいものです。このお酒を育んだ自然を眺めながら飲む一杯は、特別な味わいになるでしょう。
作った人:佐野まいける
イカ・エバンジェリスト。イカを犬や猫のように愛する会社員。「日本いか連合」の一員で、イカを多方面から楽しむ同人誌「いか生活」の編集長。イカは水族館で眺めるのも、釣るのも食べるのも好きだが、解剖に最も興奮する性質。イカ解剖のライブ配信などをたまに行う。その他、歩道橋を眺めるのが好き。
からの記事と詳細 ( イカ料理との相性を追求した日本酒「いか純米」は若き蔵人の思いが詰まっていた - メシ通 )
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