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Monday, March 22, 2021

<社説>海外客見送り 五輪何のため、説明を - 東京新聞

 東京五輪・パラリンピックの新型コロナ対策として、海外からの観客受け入れ断念が決まった。経済効果は薄れ、世界の多様な人々との交流の機会も減る。何のための開催か、説明を求めたい。

 海外からの観客受け入れの見送りは日本政府が主導し、東京都、大会組織委員会、国際オリンピック委員会(IOC)などとの五者協議で合意した。

 最大の理由は新型コロナウイルス変異株への懸念である。世界保健機関(WHO)が危険視する英国など由来の株は従来型より感染力が強かったり、ワクチン効果が減ったりする懸念がある。

 国として厳しい水際対策に取り組む中、大会の観客だけを特別扱いにできず、入国見送りはやむを得ない。ただ、影響は甚大だ。

 海外からの観客は百万人とみられ、経済損失は宿泊や飲食などを中心に二千億円を超えるとの試算もある。地方も含め、特需を見込んで設備投資を進めたところは多く、落胆は大きいだろう。

 大規模な異文化交流の機会が失われることにもなる。外国人の案内を楽しみにしていたボランティアの意欲低下につながらないか。

 日本社会全体にとっても、価値観の異なる人々とのコミュニケーションが、国際化や活性化のカギになり得ただけに、残念だ。

 開幕四カ月前になってようやく固まった大会の形は、当初の期待とは大きく異なる。大会の恩恵や付加価値、得られると思っていた果実が次々にしぼみ、「何のために開催するのか」と、多くの人が疑問に思うだろう。

 大会は「スポーツには世界と未来を変える力がある」をビジョンに掲げ、政府や都、組織委の幹部らは「復興五輪」「コロナに打ち勝った証し」などと時流に合わせて美辞麗句を振りまいてきた。

 しかし、東日本大震災の被災地では人口減少が続き、事故原発の廃炉作業も遅れている。新型コロナの克服も道半ばだ。

 一兆六千億円もの巨費を投じる大会だ。政府や都、組織委は、開催の意義を国内外にあらためて説明する必要がある。

 二十五日には聖火リレーが福島県から始まるが、大会開催へのハードルは依然として高い。

 政府が昨年十二月に打ち出した大会の感染防止対策は、変異株への懸念によって更新を迫られよう。「感染第四波」の恐れがある中、多くの選手、国内の観客が安心できる、より実効性のある対策を講じることが急務だ。

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