若者たちの目に、新型コロナウイルスの影響で1年延期となったスポーツの祭典はどう映っているのか。20代前半でソーシャルメディアやスマートフォンが当たり前の時代に育った「Z世代」と呼ばれる学生4人と、東京オリンピック(五輪)・パラリンピック大会組織委員会の橋本聖子会長が語り合った。(この座談会は、緊急事態宣言前の今月20日に実施しました)
夏冬あわせて五輪7大会に出た橋本会長がまず語ったのは、自身の現役時代の体験だった。
「40年前、女性選手への対応はほぼゼロでした。予算をかけられないから、(海外遠征で)男子の有望選手と違って時差調整をさせてもらえない。でも海外の女性選手には女性のトレーナーやドクターがついていた。こんなに違うんだ、と衝撃的だった」
若者の政治参加を促す団体「NO YOUTH NO JAPAN」を設立した慶大大学院生の能條桃子さんは、デンマークへの留学経験を踏まえ「日本にジェンダーの問題はないと思って大学生活を過ごしていた。(外に)行って初めて差に気付いた」。そして、問いかけた。「今のスポーツ界はどうですか」
橋本会長は二つの見解を示した。
「(現場は)すごくよくなった。たとえば東京五輪は出場選手の男女比率がほぼ50%ずつ。選手村のクリニックには女性特有の悩みに対応する部署を置く。五輪で初の試みです」
一方、組織の意思決定における女性の立場は難しいと感じている。「まだまだ遅れている。(1994年の世界女性スポーツ会議で採択されたスポーツのあらゆる分野の女性参加を目指す)ブライトン宣言などがあって、日本のスポーツ界も世界に追いついていくべきだという流れはできていた。組織委員会もジェンダー平等、多様性と調和を打ち出していたけど社会の目に留まっていなかった。いま一度、皆さんに見て頂く工夫をしなければいけない」
橋本会長の就任に伴い、組織委は女性理事を増やし、その比率は40%超になった。「ジェンダー平等推進チーム」を設立し、研修なども進めている。
「これだけ注目されている組織だからこそ、すべてのスポーツ団体、企業、社会に対して影響力を及ぼしたい。社会全体が女性比率を一気に50%まで持っていこうという機運の醸成になるなら、組織委から変わるべきだと思った」
そんな意気込みに対し、持続可能な社会と東京大会の関係性について研究する慶大生の西岡浩平さんが質問した。「組織委の動きに、外部からどんな声が届いていますか」
橋本会長は率直に返した。「評価は高かったと感じている。だけど、同時に『これではいけない』という思いが心の中にあった。『ただ数を増やせばいいわけじゃない』『じゃあ何が変わるの』という声がたくさんあったから」
「(理事に)素晴らしい人材が集まった。私はどんどん理事の皆さんの所に出向く。何のために東京大会があり、何の役割を果たさなければいけないんだ、という意識を持ってもらおうと動いています」
能條さんは中央競技団体役員の女性比率が15・5%にとどまっている点を指摘。この6月に多くの団体で役員改選があることを踏まえ、組織委の動きが広がりを見せるかを聞いた。
橋本会長は「6月にできる限り女性理事を増やすことへの期待を、国内競技団体との会合で申し上げた。(各団体に)お願いしている。ここで『やる気度』が分かるだろうなと思っている。JOCや日本スポーツ協会も力を入れてくれている」と語った。
世代間の意識のずれ、どうすれば
能條さんは、森喜朗前会長の女性蔑視発言に抗議する署名を15万筆集めた。その時、ジェンダーに関する世代間のずれを感じた。
「(将来的に)女性が(役員に)選ばれるのが普通の時代になればいいと思う。でも、今の社会の意思決定層はほとんどが(橋本会長より)上の世代。その方たちが学び続けて、常識をアップデートしてもらうことが次の世代を育てるためにも大事になる」
橋本会長もうなずく。
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