小さく生まれた赤ちゃんの成長を記録できる「リトルベビーハンドブック」(LBH)を作りたい−。2500グラム未満で生まれた低出生体重児は、母子手帳に掲載されている月齢ごとの成長や発達過程が当てはまらず、落ち込む保護者も少なくない。全国でLBHの発行が進む中、わが子が低体重で生まれた豊島区の
「裸にすると手足をよく動かしますか」「お乳をよく飲みますか」…。母子手帳の「生後1カ月ごろ」の記録欄には、こんな項目が並ぶ。昨年九月に妊娠29週、1080グラムで生まれた羽布津さんの次女の生後1カ月は、新生児集中治療室(NICU)を出たものの面会制限で抱くこともできなかった。
2歳の長女も低体重で生まれた羽布津さん。次女を産んですぐ、母親仲間から静岡県発行のLBHを教えてもらった。発達の記録は、母子手帳のように「生後何カ月で何ができる/できない」ではなく、初めてできた日を記録する。「まだできない」とがっかりすることもない。欄外に書かれた先輩ママからのアドバイスにも癒やされた。
「東京でも作りたい」。今年5月、フェイスブックで呼びかけ、当事者グループ「みらいbaby」を立ち上げた。真っ先に手を挙げた江東区の櫻田智子さん(40)は、現在小学1年生の長男が2283グラムで生まれた。「人から『何カ月?』と聞かれるのも嫌だった」と振り返る。
都の最新データでは、2019年に生まれた赤ちゃん10万1818人のうち、2500グラム未満で生まれたのは、9・2%に当たる9386人。都は12年、訪問看護に携わるNPO法人が編集した「のびのび NICU退院支援手帳」を発行。これまでに3500部を配布している。
羽布津さんも出産直後にこの手帳を見たが、医療ケアの項目に「気管切開」「胃ろう」などの言葉が並び「将来が不安になってしまった」。大きくて母子手帳ケースに収まらないのも不満という。
都福祉保健局医療政策部もニーズは知っているが、今のところ作成の動きはなく、「NICU退院支援手帳を活用してほしい」という。羽布津さんたちは保護者の声を生かしたLBHを目指し、同じ立場の人たちとビデオ会議などで情報交換をしている。
◆全国各地で発行
世界で母子手帳の普及啓発活動を行う国際母子手帳委員会の板東あけみ事務局長(70)によると、国内では2018年4月の静岡県を皮切りに、ことし3月までに11自治体がLBHを発行。首都圏では、埼玉県川口市、千葉県印西市が発行している。
「お母さんは、緊急帝王切開などの末、保育器に入ってチューブにつながれたわが子と対面し、強い自責の念に襲われている。そんな時に病院でLBHを手渡され、先輩ママのコメントを読むことは、孤立感を和らげることにもつながる」と板東さん。1500グラム未満で生まれた「極低出生体重児」の発育も記録できるよう工夫されており、各地で作成の動きがあるという。
板東さんは、母親らと行政の母子保健担当職員が、作成過程で意見交換する中で相互理解を深める事例を何度も見てきた。「東京では、既にある『のびのび NICU退院支援手帳』を、当事者の声を取り入れてLBHに改訂するのが現実的では」と提言する。
文・小形佳奈 写真・池田まみ 紙面構成・飯盛結衣
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