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Monday, December 6, 2021

コロナ 飲み薬「モルヌピラビル」とは?効果や対象は?詳しく - nhk.or.jp

新型コロナウイルスの新しい変異ウイルス、オミクロン株の感染が国内でも確認。
こうした中、12月3日、アメリカの製薬大手メルクが、新型コロナウイルスの飲み薬「モルヌピラビル」の日本国内での使用を認めるよう厚生労働省に承認を申請しました。
「モルヌピラビル」とはどんな薬なのか、効果や安全性、それにオミクロン株への影響など、現段階でわかっていることをまとめました。

新型コロナウイルスの飲み薬「モルヌピラビル」とは

承認が申請されたのは、メルクが新型コロナウイルスの軽症と中等症の患者向けに開発した飲み薬「モルヌピラビル」です。

「モルヌピラビル」は、アメリカの製薬大手「メルク」が開発した重症化を防ぐ効果があり、感染から間もない患者に使える初めての飲み薬です。

ウイルスが細胞に侵入したあと、設計図となる「RNA」をコピーして、ウイルスが増殖するのに必要な酵素の働きを抑え、増殖を防ぎます。

感染が確認されたらなるべく早く、症状が出た場合は5日以内に服用することが推奨され、新型コロナウイルスの軽症から中等症の患者で、肥満や糖尿病など、感染した場合に重症化するリスクが少なくとも1つはある人が対象です。

メルクの発表によりますと「モルヌピラビル」は臨床試験では、発症から5日以内で重症化リスクがある患者に対し、入院や死亡のリスクを30%低下させる効果が確認されたということです。

安全性については大きな懸念は確認されなかったとする一方、胎児の成長に深刻な影響が出る可能性が否定できないなどとして、妊娠中の患者への使用は推奨していません。

「入院・死亡リスク低下」具体的な効果は?

メルクは、重症化リスクがある患者の入院や死亡のリスクを低下させる効果は、2021年10月には治験の初期段階での解析の結果、およそ50%としていましたが、11月には追加の解析を行った結果、およそ30%だったと発表しました。

2021年10月の発表では、発症から5日以内の患者で、重症化リスクのある760人あまりを、薬を投与するグループと、プラセボと呼ばれる偽の薬を投与するグループに分けて、経過を比較したところ、プラセボを投与したグループでは、入院した人や死亡した人の割合が14.1%だったのが、薬を投与したグループでは7.3%で、入院や死亡のリスクがおよそ50%低下したとしていました。

一方で、11月に発表した、追加のデータを加えた治験の解析結果では、1400人あまりを、薬を投与するグループと、プラセボを投与するグループに分けて、経過を比較したところ、プラセボを投与したグループでは、入院した人や死亡した人の割合が9.7%だったのが、薬を投与したグループでは6.8%で、入院や死亡のリスクがおよそ30%低下したとしています。

また、副作用について、薬を服用したあとで有害事象が出た割合は、薬を服用したグループと、プラセボを服用したグループで変わらなかったとしています。
 

オミクロン株への影響は?

「モルヌピラビル」は、細胞に侵入したウイルスが増殖するのを抑えるタイプの薬で、細胞内でウイルスが増殖するのに必要な酵素が作られるのを防ぎます。

新型コロナウイルスの治療に詳しい愛知医科大学の森島恒雄客員教授によりますと、このタイプの薬は、細胞内に入ったウイルスに作用する働きがあり、オミクロン株に見られる変異には大きく影響されないと考えられるため、これまでの新型コロナウイルスに対してと効果は変わらないのではないかとしています。

森島客員教授
「開発が進む飲み薬については、実際に細胞の中に入ったウイルスが増殖するのを防ぐ仕組みで、治療効果はそのまま期待できると思う。オミクロン株で影響を受けるとしても、今後承認された場合には飲み薬、そして、抗体医薬を早めに投与し、重症化を防ぐといった治療戦略は変わらない」

今後の手続きはどうなる?

国内で新型コロナウイルスの飲み薬の承認申請が行われたのは初めてです。承認されれば、自宅でも服用できるようになるほか、これまでの治療薬に比べて病院での管理が簡単になり、患者や医療機関の負担の軽減につながると期待されています。

厚生労働省は、すでにメルク側と160万人分の供給を受けることで合意していますが、当面は流通量が限られるため、特定の医療機関や薬局に供給することなどが検討されています。

厚生労働省は有効性や安全性を審査した上で、年内にも専門家部会を開いて承認の可否を判断する方針です。

「モルヌピラビル」は、2021年11月にイギリスの規制当局が承認しているほか、アメリカでもFDA=食品医薬品局の専門家委員会が、緊急使用の許可を出すことを支持する結論を賛成13人、反対10人の賛成多数で可決していて、これを受けて近く、FDAが最終的に判断する見通しです。

また、EUの医薬品規制当局は11月19日、まだ審査中の軽症患者向けの飲み薬「モルヌピラビル」について、緊急時などに成人への使用を認めると発表しました。

課題 迅速に患者にどう届けるか

「モルヌピラビル」は、発症から5日以内の服用が推奨されているため、早期に患者に届けられるかどうかが課題となります。

モルヌピラビルの処方を受けるには、医療機関などで検査を受けることが条件となる見通しですが、感染が急拡大した場合は業務がひっ迫してすぐに検査が受けられず、結果が出るのにも時間がかかるおそれがあります。

さらに、検査結果が出たあと、薬を入手するまでに通常より時間がかかるケースも出てくると見られています。

陽性となった場合、厚生労働省は周囲との接触をできるだけ避けてもらうため、患者が薬局に出向くのではなく、自宅で受け取るようにする方法を検討しています。

受診した医療機関が、患者の最寄りの薬局にFAXなどで処方箋を送り、薬局の薬剤師が電話やオンラインで患者に服用方法などを指導したあと、運送業者を通じて薬が配送される仕組みです。

しかし、当面は供給量が限られるため、自治体が指定した薬局に配分される予定で、人口の少ない地域や離島などに住む患者で、指定された薬局が身近にない場合、配送に日数がかかるおそれがあります。

医療現場の受け止めは

医療機関や薬局では飲み薬承認への期待が高まる一方、自宅で服用する際の経過観察が大切だという声や処方の基準を明確にしてほしいという声が聞かれました。

JR千葉駅の構内にある薬局では、医師から処方箋を受け取って患者の自宅に薬を配送する仕組みを去年3月から取り入れています。処方箋が届くと薬剤師が患者に電話で連絡をして薬の飲み方などを説明する「服薬指導」を行ったうえで、宅配業者を通じて配送します。

新型コロナの患者や、感染が心配で通院を控えている高齢者など、これまでに1000件ほど利用があったということです。飲み薬が実用化された場合、隣にあるクリニックと連携すれば陽性と判明したその日のうちか翌日には届けることができると見込んでいます。

薬剤師 白鳥香さん
「飲み薬という選択肢が増えることは安心材料になると感じます。薬を届けたあとに状況を確認することが大切になってくると思うし、副作用の情報もしっかり把握していきたい」

薬局の隣のクリニックでは、PCR検査やオンライン診療を行っていますが、ことし夏の第5波の際には1日に200人ほどが検査に訪れ検査結果が出るまでに2、3日かかることもあったということです。発症後5日以内に服用を始めるためには、できるだけ早い受診を呼びかける必要があると考えています。

柳本蔵人医師
「これまで点滴の薬は出ていたが、われわれのようなクリニックで使うのは難しかった。飲み薬になれば早めに投与して重症化を防げるようになるのではないか。ただ、第5波のときも最初は軽症だった患者が急に状態が悪化することがあり、自宅で服用する際のフォローアップは大切になると思う。また、薬の量は限られているので、重症化する人に行き届かない事態にならないように、どういった人に処方するのか国には基準を明確にしてもらいたい」

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