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Friday, May 27, 2022

元農相有罪判決 説明責任尽くさぬ政権党 - 西日本新聞

 政治への信頼を根本から損なう不祥事が続き、その当事者の説明責任が十分に果たされない。この不正常かつ不誠実な事態に慣らされてしまわぬよう、私たちも自戒したい。

 そんな思いを強くさせる判決だった。

 鶏卵生産大手の元代表から計500万円の賄賂を受け取ったとして、収賄罪に問われた元農相の吉川貴盛被告に、東京地裁が懲役2年6月、執行猶予4年、追徴金500万円を言い渡した。

 判決は500万円の趣旨について、ストレスの少ない環境で鶏を飼育するための国際基準案に反対するなどの便宜を図った見返りと認定した。吉川被告は実際に農政をゆがめていたことになる。

 しかも、こともあろうに3回の現金授受のうち2回は大臣室だった。「大臣としての自覚が欠けていた」という判決の指摘はもっともである。

 被告側は「純粋な政治献金」として無罪を主張したが、判決は「不合理で常識からかけ離れた弁解」と一蹴した。領収書はつくらず、政治資金収支報告書にも記載しないまま使い果たしたとあっては、当然の結論だろう。

 吉川被告は汚職疑惑の発覚後、健康上の理由で自民党衆院議員を辞職したきり、国民に対する説明責任を果たしていない。判決後も「主張が受け入れられず残念」というコメントを出しただけだ。

 こうした対応には、いくつもの前例がある。

 今回の判決で、安倍晋三政権の閣僚経験者のうち3人が刑事裁判で有罪となった。副大臣経験者でも、貸金業法違反の有罪が確定した遠山清彦元財務副大臣=公明党から除名=ら2人が有罪判決を受けた。まさに異常事態だ。

 大規模な選挙買収事件で懲役3年の実刑が確定した河井克行元法相は逮捕前「捜査中」を理由に説明を拒んだ。違法寄付で罰金刑が確定した菅原一秀元経済産業相は記者会見しないまま議員辞職した。

 安倍氏も閣僚らの不祥事のたびに「任命責任は私にある」と語っていたが、自ら具体的に何らかの対処をしたり、当事者に説明を求めたりすることはないままだった。

 不祥事が露見しても頬かむりしたまま時がたてば説明責任をうやむやにできる。政権党で続く、こうした身の処し方がモラルハザード(倫理観の欠如)を招いていないか。

 岸田文雄政権下でも説明回避は続く。森友学園関連の決裁文書改ざん問題を巡り、自殺した近畿財務局元職員の遺族が起こした訴訟を「認諾」という形で終結させた。なりふり構わなくなったようにすら思える。今回の判決についても、政権からは人ごとのような反応しか出てこない。

 この背景には、自民の「1強多弱」となった政界の緊張感欠如もあろう。国民の疑念を招いたならば、丁寧に説明することは政治家として当然であり、政権党こそ自らを厳しく律するべきだ。

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