昨年7月、盛り土崩落に伴い土石流が発生した熱海市伊豆山の逢初(あいぞめ)川上流域で盛り土などの砂防規制が約20年間見送られていた問題で、静岡県が地権者の同意取得が必要だと判断した根拠と説明していた行政手続きの解説書に、同意取得が必要だとする文言が記されていなかったことが、14日までの取材で分かった。地権者の不同意を理由に砂防規制を見送ったと主張してきた県の説明の信ぴょう性が揺らいでいる。
県が根拠としてきた解説書は、国土交通省砂防部が監修した「砂防指定地実務ハンドブック」。地権者の同意について「得られるよう努める必要がある」と記述している。県はこの解説書を引用し、同意が取れないから規制を見送ったと説明していた。
ところが、この解説書は2001年の発行で、県が上流全体の規制を見送った1998年には存在していなかった。当時は89年に発行された改訂前の解説書「砂防指定地指定実務要領」が使われていたが、同意が必要だと受け取れる文言は記されていない。規制区域の指定後に地権者に周知するよう求める記載があっただけだった。
県砂防課は取材に対し「(当時の担当者は)私権制限がかかるため同意が必要だと考えたのではないか」と推測している。ただ、当時の国からの通達など、同意が必要だと判断した明確な根拠は示していない。
■国は曖昧 「緊急性あれば不要」
砂防規制の範囲「砂防指定地」を指定する権限のある国は、規制対象となる地権者の同意取得の必要性について、曖昧な方針を採り続けてきた。国土交通省は取材に「同意は得た方がいいが、緊急性があれば不要」とする見解を示している。
砂防法は、都道府県が規制範囲を国に申請し、国が規制範囲を決定する仕組みを定めている。国は通達や解説書を通じ、規制範囲の対象などの原則を都道府県に提示している。
地権者の同意取得に関して、国が監修した1989年発行と2001年発行の解説書には、いずれも「同意は法的要件とはなっていない」と記述されていた。
ただ、砂防法を所管する国交省砂防計画課は「私権制限がかかるので運用面で同意を取る必要がある」とも話す。県に同意取得を求める根拠については「何とも言えない」と言葉を濁している。
からの記事と詳細 ( 逢初川上流域の砂防規制見送り 県の説明、信ぴょう性疑念【熱海土石流】|あなたの静岡新聞 - あなたの静岡新聞 )
https://ift.tt/G2tHjON
No comments:
Post a Comment