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Thursday, April 15, 2021

健康診断で「ピロリ菌陽性」、どう対処したら? 放置で胃がんリスクは? - オトナンサー

ピロリ菌を放置するとどうなる?
ピロリ菌を放置するとどうなる?

 胃の中にいると、胃がんのリスクが高まるとされている「ピロリ菌」。健康診断で「ピロリ菌陽性」と診断され、驚いた経験のある人もいるのではないでしょうか。健康診断で「ピロリ菌陽性」と診断されたら、どのように対処すればいいのでしょうか。また、陽性と診断された後、そのまま放置するとどうなるのでしょうか。内科医の市原由美江さんに聞きました。

感染しても自覚症状がない場合も

Q.そもそも、ピロリ菌とはどういうものなのでしょうか。

市原さん「ピロリ菌の正式名称は『ヘリコバクター・ピロリ』で、人の胃の粘膜に定着する菌です。ピロリ菌の感染経路は詳しくは分かっていませんが、幼少期に井戸水をそのまま飲むなど、子どもの頃の衛生環境が原因で感染することが多いと考えられています。また、乳幼児は免疫力が低いためピロリ菌に感染しやすく、食べ物の口移しなどによる親からの感染が疑われるケースが多いです。大人になってから、日常生活でピロリ菌に感染する可能性は低いです。

子どもの頃の衛生環境が感染に影響するためか、日本では年齢が高い人ほど感染率が高く、厚生労働省の会議で示された資料によると、50代で4割超、70代以上で6割以上といわれます」

Q.ピロリ菌に感染した場合、どのような症状が出るのでしょうか。

市原さん「ピロリ菌はアンモニアや毒素を作り出して胃の粘膜に悪影響を与えるため、胃潰瘍や胃炎になることがあります。その場合、胃の痛みや不快感、胸焼けなどさまざまな症状が現れます。しかし、自覚症状が全くない人も多く、健康診断などで初めてピロリ菌に感染していることを知り、驚くケースがよくあります。つまり、実際に検査をしないと、ピロリ菌に感染しているかどうか分からないことが多いので、健康診断を定期的に受けることがとても大切です。

また、ピロリ菌に感染していると胃がんのリスクも高まります」

Q.「ピロリ菌陽性」と診断されたのに放置した場合、どうなるのでしょうか。

市原さん「感染を放置した場合、先述したように、炎や胃潰瘍、さらには胃がんなどの病気を引き起こす可能性があります。胃がんの人の9割以上がピロリ菌に感染していたことが分かっています」

Q.ピロリ菌感染の検査方法について教えてください。

市原さん「健康診断でよくあるケースは胃のバリウム検査(エックス線検査)で、『萎縮性胃炎』という、ピロリ菌による胃炎の可能性を指摘されることです。この場合、病院で胃カメラ検査を受けて萎縮性胃炎が確認できたら、血液検査でピロリ菌の抗体を測定します。

胃カメラ検査のときの病理検査(人体から採取した組織、細胞の形態を顕微鏡で観察し、病気の可能性を診断すること)でピロリ菌の有無の確認を行うこともありますが、胃カメラ検査よりも簡便な血液検査で、ピロリ菌の抗体を測定することが多いです。他にも、便検査や呼気検査(尿素呼気試験)でもピロリ菌の有無を確認できます」

Q.「ピロリ菌陽性」と診断された場合、どのような治療を行うのでしょうか。

市原さん「ピロリ菌の感染が判明したら、基本的には除菌治療を行います。ただし、除菌治療の前に、胃カメラ検査で先述の萎縮性胃炎にかかっていることを確認しなければ、健康保険が適用されません。そのため、血液検査や便検査などでピロリ菌への感染が判明した場合、胃カメラ検査は必須です。なお、バリウム検査で胃潰瘍と診断されたときも除菌治療に健康保険が適用されます。

除菌治療は朝と夜の2回、抗生物質と胃薬を同時に飲みます。これを1週間継続します。薬を飲んでいる間は飲酒を控えた方が除菌率が上がります。一般的に、この除菌方法で9割以上の人が除菌に成功します。薬を飲み切って1カ月が経過したら、除菌に成功したかどうかの確認のため、尿素呼気試験をします。除菌に失敗した場合、薬の内容を変更した2次除菌用の薬のセットが処方されるので、それを1週間飲み続けます。1回目同様、薬を飲み切ってから1カ月後に再度、尿素呼気試験を行います」

Q.以前、胃カメラ検査を受けたときは「陰性」と診断されたのに、その後の健診で「陽性」と診断されることもあるようです。その場合、どのような原因が考えられるのでしょうか。

市原さん「検査の種類によっては、ピロリ菌に感染しているのに『陰性』と診断されてしまうことがあります。これを『偽陰性』といいます。例えば、胃カメラの検査のとき、病理検査のように胃の組織を検査してピロリ菌の有無を調べる方法だった場合、組織を取った部位によっては、その場所にたまたま、ピロリ菌がいないこともあるので、たとえピロリ菌に感染していても陰性と診断されることがあります。

また、ピロリ菌による萎縮性胃炎は、ピロリ菌に感染して一般的に10年以上経過しないと症状が胃に出現しないため、胃壁の見た目でピロリ菌がいないと判断されることもあります。血液検査でピロリ菌の抗体を調べるときも、体調や内服している薬の影響で偽陰性になることがあります。陰性でも抗体濃度の数値が高めだったら、尿素呼気試験をすることで陽性が判明することがたまにあります。

医師の経験、判断によって変わってくるので、正確な診断を受けたいのであれば、消化器内科を受診した方がいいと思います」

Q.ピロリ菌の除菌治療を受けた後、気を付けるべきことはありますか。

市原さん「除菌しても数年間は萎縮性胃炎は完治しません。萎縮性胃炎は胃がんにつながるリスクが高いです。そのため、除菌後も年1回、胃カメラ検査を受けることが大切です」

(オトナンサー編集部)

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