東京パラリンピックでは、22競技が実施されている。だが、すべての障害のカテゴリーが各競技に設定されているわけではない。
競技によって身体的な必要性は異なる。そのため、競技ごとに独自のクラス分けがされている。
アーチェリー
アーチェリーは運動機能障害がある選手たちが出場でき、2つのクラスに分かれている。
オープン:脚に障害があり車いすを利用するか、平衡機能障害がある選手が、立位かいすに腰掛けて弓を射る。種目によってリカーヴまたはコンパウンドの弓を使う
W1:四肢に障害がある車いす利用者で、筋力や協調機能、動きの範囲が明らかに失われている選手
陸上
陸上にはすべての障害グループが出場できる。クラスは文字と数字の組み合わせで区別されている。
「F」はフィールド競技、「T」はトラック競技を示し、数字は障害を表す。
11~13:視覚障害のある選手。全盲の選手はクラス11で、目隠しを着けて伴走車と走る。 クラス12は視覚障害があるが伴走車の有無は選択できる
20:知的障害がある選手。競技の際の反応時間や認識記憶に困難がある
31~38:脳性まひや、筋肉の協調や制御に影響が及ぶ他の神経学的疾患がある選手。クラス31~34の選手は座位(レースや投てき用の車いす利用)、クラス35~38の選手は立位で競技する
40~41:身長が低い(医学的に低身長症とされる)選手
42~44:下肢に障害があるが義肢を使わない選手
45~47:上肢に障害がある選手
T51~54:車いす使用のトラック選手。T51~52の選手は下肢と上肢の両方に障害がある。クラスT53の選手は両腕が完全に機能するが、胴体の機能を失っている。T54の選手は胴体の一部と脚の一部の機能を有する
F51~57:車いす使用のフィールド選手。F51~54の選手は肩や腕、手の機能が制限されており、胴体や足の機能が失われている。F54の選手は腕と手の機能が正常。 F55~57の選手は胴体と脚の機能が増す
61~64:下肢に障害があり義肢を使う選手
バドミントン
バドミントンの選手たちは6クラスに分類される(車いす2クラス、立位4クラス)。
WH1とWH2:車いす使用の選手。WH1の選手のほうがWH2の選手より障害の程度が重い
SL3とSL4:下肢に障害があり立位で競技する選手
SU5:上肢に障害があり立位で競技する選手
SH6:身長が低い(医学的に低身長症とされる)選手
ボッチャ
ボッチャは脳性まひや、筋ジストロフィーなど重度の機能障害がある人が車いすに乗った状態で競う。クラス分けは4つ。
BC1:脳性まひがあり、手足を使ってボールに推進力を与えられる選手。投球にあたって補助者にボールを手渡してもらうことはできるが、補助具は使えない
BC2:脳性まひがあり、手を使ってボールに推進力を与えられる選手。BC1の選手より大きな機能を有する
BC3:脳性まひか、四肢すべてに障害があり、ボールを投げたり蹴ったりできない選手。ボールに推進力を与えるため、勾配具「ランプ」など補助具を使える。選手の指示でランプを調整するアシスタントの支援を受けられる
BC4:脳性まひはないが、四肢すべてに障害があり、BC2の選手と同様の機能を有する選手。筋ジストロフィーや脊椎披裂、四肢まひはこのクラスに分類される
カヌー
運動機能障害がある選手すべてがカヌーに出場できる。両端にブレードが付いたパドルを使うカヤック(KL)か、長めのカヌーで片側がブレードのパドルを使うヴァー(VL)の2種類。それぞれ、3つのクラスがある。
KL1:胴体の機能が全くないかわずかで、脚の機能が失われている選手
KL2:胴体と脚の機能が部分的にある選手。カヤックの中で背中を伸ばして座ることができる。パドリングの際には脚の動きが制限される
KL3:胴体と脚の機能が部分的にある選手。少なくとも1つの義肢を使える
VL1:胴体の動的機能がない選手
VL2:胴体と脚の機能によって選手は点数が与えられ、このクラスには片方の機能の点数がもう片方より低い選手が分類される
VL3:胴体の動的機能が完全か完全に近い選手
自転車競技
自転車競技は筋力や可動範囲に障害がある選手や、四肢欠損、脚の長さの違い、筋緊張亢進、運動失調、アテトーシス(脳性まひや脳損傷、脳卒中、多発性硬化症が原因の場合がある)、視覚障害がある選手が出場できる。
自転車に乗る種目はトラックとロードで開かれ、ハンドサイクルとトライシクル(三輪車)の種目はロードのみで実施される。
C1~5:選手は障害に合わせて調整された自転車で競技する。脳性まひなどがある選手や、脚や腕を切断した選手などが含まれる。C1の選手が障害が最も重度で、C5の選手は最も軽度。例えば、両脚を切断した選手はC3に分類され、片脚を切断した選手はC4以上に分類される
B:視覚障害のある選手が、2人乗り自転車で競技する。前には晴眼者のガイドが乗る
H1~5:ハンドサイクル選手のカテゴリー。H1~4の選手はリクライニング姿勢で競技に臨む。H1の選手は胴体や脚の機能がなく、腕の機能が限定されている。H3の選手は脚の機能はないが、胴体と腕の機能は十分にある。H5の選手は膝を曲げて座り、腕と胴体を使って走行する
T1~2:平衡機能や協調機能に障害があり、自転車に乗ることができず、トライシクルを使用する選手。T1の選手はT2の選手より重度の協調機能障害がある
馬術
パラリンピックの馬術は馬場馬術のみで、すべての障害グループが参加できる。
5種類のグレードがあり、選手は障害の性質と程度によって分類される。運動機能の障害がある人も視覚障害がある人も、男性も女性も一緒に競う。グレードによって演技の難易度のレベルが決まる。
グレード I:四肢に重度の障害があり、胴体の制御もあまり利かず、日常生活において通常、車いすを使用している選手
グレード II:胴体の制御がかなり利かず上肢に最小限の障害がある選手か、四肢と胴体に中程度の障害がある選手。多くの選手は日常生活で車いすを使用
グレード III:両下肢の機能がかなり限定的だが胴体の平衡機能は十分にある選手や、四肢に中程度の機能限定があり、胴体の制御機能が損なわれている選手。一部の選手は日常生活で車いすを使用
グレード IV:独力で歩行でき、両腕に障害があるか、両腕を欠損している選手や、四肢すべてに中程度の障害がある選手。全盲の選手や低身長症などの選手も含まれる
グレード V:独力で歩行でき、視覚障害、可動域や筋力の減少、腕や脚の機能障害のいずれかがある選手
5人制サッカー
5人制サッカーは、視覚障害がある選手が出場する。
ゴールキーパー以外の全選手がアイマスクを着用する。キーパーは晴眼または弱視の選手だが、決まったエリアから出られない。オフサイドはない。
ボールの内部には金属が入っており、転がると音がする。
ゴールボール
ゴールボールは視覚障害がある選手がプレーする。クラス分けが不要な特別ルールが設けられている。
全盲の選手も視覚障害のある選手も公平に競えるように、選手全員がアイマスクを着ける。マスクは試合中にチェックされる。
ボールの内部には鈴が入っており、選手は音を頼りに動く。そのため、試合は静寂の中で行われる。
柔道
柔道は、視覚障害のる選手のみで競われる。カテゴリー分けはなく、オリンピック同様、体重によって階級が分けられる。
オリンピックとの主な違いは、選手が離れた状態ではなく、組み合った状態から試合を始めることだ。
柔道着の袖の赤い丸印は、選手が全盲であることを示す。聴覚障害のある選手は、柔道着の右隅に黄色い丸印をつけている。
パワーリフティング
パワーリフティングは、運動機能障害のあるすべての選手が出場できる。クラス分けは、体重によってのみなされる。
選手は下肢や腰に障害がある。まひ、脳性まひ、下肢切断などが原因の選手もいる。
男女別に10クラス(階級)が設けられている。
ボート
ボートは3つのクラスに分けられる。
PR1:腕と肩は完全に動くが、脚の機能が失われている選手。脊椎損傷などが原因として考えられる。平衡機能が弱いため、体をボートに固定させる
PR2:胴体と腕は十分に動くが、脚の機能が減少している選手。漕ぐ時はスライドするシートを使えない
PR3:四肢と胴体に障害があるが、動かすことができる選手。視覚障害者もこのクラスに分類される
射撃
射撃の選手は、車いすと立位のグループに分類される。
各グループは、選手が使用可能な器具のタイプによって、さらに6つのクラスに分けられる。
SH1:支持スタンドを必要としないピストルやライフルの選手。四肢の1つに障害がある場合が多い。選手は座位と立位を選択できる
SH2:腕に障害があり支持スタンドを必要とするライフル選手。多くが車いすを使用する
シッティングバレーボール
シッティングバレーボールは、運動機能障害がある選手によって競われる。四肢のいずれかを切断した選手が多数を占める。
選手は最低レベルの障害(MD)と障害(D)の2つのクラスに分けられ、コートに同時にいる6選手のうち、MDは1人だけに限定される。
MDの選手は、前十字靭帯損傷や指の欠損などが考えられる。
水泳
水泳は、四肢の損失や脳性まひ(協調機能や運動機能の制限)、脊椎損傷(四肢のいずれかが関係する機能低下やまひ)、その他の障害(低身長症や関節の動きの限定)など、さまざまな障害の選手を対象としている唯一の競技だ。多くのクラスが設けられている。
1~10:運動機能障害がある選手。数字が小さいほど障害の程度が重い
11~13:視覚障害がある選手。クラス11の選手は視界を遮るゴーグルの着用が義務付けられており、泳いでいる時はタッパーから壁が近いことを知らせてもらう。クラス12と13の選手は、タッパーの使用を選択できる
14:知的障害がある選手
数字の前のSは、自由形、背泳ぎ、バタフライを示す。SBは平泳ぎ、SMは個人メドレーを意味する。
文字と数字の組み合わせで、種目と障害の重さがわかる。
どのクラスでも、選手はスタート時に飛び込むことも、プール内から泳ぎ出すこともできる。どういうスタートをするかは、クラス分けの際に勘案される。
同一選手でも、種目によってクラス分けが違うことがある。例えば、平泳ぎと背泳ぎでは体の動きが違うため、クラス分けの評価も異なりうる。
卓球
卓球は、運動機能障害や知的障害がある選手によって競われる。クラスは11ある。
1~5:車いす使用の選手。数字が小さいほど障害の程度が重い
6~10:独力歩行が可能な選手。数字が小さいほど障害の程度が重い
11:知的障害がある選手
テコンドー
東京パラリンピックには、K43とK44のクラスの選手だけが出場できる。これらは統合され、K44として開催される。男女それぞれ体重別に3階級が設けられている。
K43:両腕の肘から先を切断しているか、同程度の機能損失がある選手
K44:片腕の肘から先を切断しているか、同程度の機能損失がある選手。または、足指の欠損により、かかとを上げる機能に影響が及んでいる選手
トライアスロン
トライアスロンは男女とも6クラスに分けられる。
PT1:車いす使用の選手。スイム(水泳)、ハンドバイクを使ったバイク(自転車)、レーシング用車いすによる5キロメートルのラン(長距離走)をする
PT2-5:独力歩行が可能な選手。筋力や可動範囲の喪失、四肢の欠損などがある選手が考えられる。バイクでは承認を受けた調整済み自転車を使うことができ、ランでは義肢を使うこともできる
PTVI:視覚障害がある選手。タンデム自転車の使用や、ガイドと共にランをすることが可能
車いすバスケットボール
車いすバスケットボールには、車いす使用の選手が出場できる。下半身のまひや、下肢の切断、脳性まひ、ポリオなどが障害の原因として考えられる。
バスケットボールに関連した動作をする運動機能がどれくらいあるかによって、クラス分けがされる。
すべての選手は、1.0から4.5までのポイントが与えられる。1.0の選手が障害の程度が最も重く、4.5が最も軽い。
コートに同時に立つ選手5人の合計が14ポイントを超えてはならないルールになっている。
車いすフェンシング
車いすフェンシングは車いす使用の選手が出場できる。脊髄損傷、下肢の切断、脳性まひなどが障害の原因として考えられる。
選手は2つのクラスに分けられる。
カテゴリーA:平衡機能とリカバリー力が十分にある選手。胴体は完全に動き、剣を持つ腕の機能も問題ない。このクラスの選手は全員が日常生活で車いすを使用しているわけではない
カテゴリーB:平衡機能とリカバリー力が乏しい選手。上肢は片方または両方が完全に機能する。剣を持つ腕に障害があり、競技中はもう片方の腕を使って体を支えている選手もいる
車いすラグビー
車いすラグビーの選手は、ポイントシステムによって分類される。障害の程度が最も重い選手は0.5点が与えられ、最も軽い人は3.5点となる。
各チームは、同時にコートに入る選手4人の合計点が8点を超えてはならない。
車いすテニス
車いすテニスは、オープンとクアードの2つのクラスで競われる。クアードは、四肢のうち3つ以上に障害がある選手。
試合では、選手は相手が打ったボールを2バウンドまでさせて返球できる。
クアードの選手は、両脚に重度の障害があり、利き腕にもある程度の障害がある。ストラップを使ってラケットを手に固定している場合が多い。
オープンは、それ以外の運動機能障害がある、車いすを使うすべての選手が出場できる。日常生活では車いすを使わない選手もいる。
からの記事と詳細 ( 【東京パラ】 選手たちのクラス分け 競技ごとに説明 - BBCニュース )
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