新型コロナウイルス感染がリバウンド(再拡大)しないか、慎重な判断が必要ではないか。 政府は、京都や滋賀など19都道府県に発令中の緊急事態宣言を、期限としている30日で全面解除する方針を固めた。8県に適用中のまん延防止等重点措置も終了させる方向だという。 全国的な感染状況の改善を踏まえた対応とするが、医療現場の重い負担は完全には解消されていない。政府には、判断の根拠を科学的知見に基づいて説明することが求められる。全国一律の解除が妥当かどうかも検討する必要がある。 現在の流行「第5波」では、新規感染者数がピーク時は2万5千人を超えたが、この1カ月余りで約10分1に急減した。重症者用を含む病床使用率も、一時は医療崩壊の瀬戸際まで悪化したが、東京を除く対象地域で50%を下回り、宣言解除の新基準を満たした。 ただ、数値が下がったとはいえ、新規感染者数や病床使用率は首都圏や関西圏のほとんどで、2番目に深刻な「ステージ3(感染急増)」以上だ。自宅療養者と入院先調整中の人の合計は、今月22日時点で約3万3千人に上る。 新基準が重視する医療の逼迫(ひっぱく)度が十分に改善されたとは言いがたい。 感染者が減少した理由は、ワクチン接種の進展や危機意識の向上などが挙げられているが、はっきりとは分かっていない。宣言が解除されても、マスク着用などの基本対策を怠ってはならない。 疑問なのは、宣言が解除されても、各自治体が酒類提供や営業時間で独自の自粛要請を続ける考えを示している点だ。宣言の裏付けがない中での私権制限には限界がある。どれだけ実効性を保てるかは見通せない。 政府は、接種証明や検査の陰性証明を組み合わせた「ワクチン・検査パッケージ」を活用し、行動制限を段階的に緩和するとの考えを示している。 国民の「自粛疲れ」が指摘され、経済的負担を抱える事業者も少なくない。政府の解除方針は、こうした状況に配慮したようにも見える。だが、従来のコロナ対策では解除とリバウンドが繰り返されてきたことを忘れてはならない。 近く退任する菅義偉首相は自らの任期中の全面解除が望ましい立場だと言われるが、コロナ対策と政治日程を絡めてはならない。解除後も、病床の確保や自宅療養者への対応など課題の再点検と備えが引き続き求められる。
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