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Sunday, December 5, 2021

リコーがオフィスサービス事業の取り組みを説明、提供価値や取引顧客の拡大を図る - クラウド Watch

 株式会社リコーは1日、オフィスサービス事業に関する取り組みについて説明。中期計画に対する進捗状況などにも言及した。

 そのなかで、中小企業向けの「スクラムパッケージ」の累計販売本数が18万本となり、課題解決シナリオ数が154パッケージとなっていること、中堅企業向けソリューションの「スクラムアセット」が2021年度上期だけで78%増と大幅に伸長していることを示し、いずれについても、今後は業種別・業務別課題をとらえた製品群の品ぞろえを強化する考えを明らかにした。

 また、コンテンツマネジメントのクラウドサービス「DocuWare」がグローバルで高い成長を遂げ、今後、日本における電子帳簿保存法改正が導入の追い風になるとの考えなども示した。

オフィスサービスとオフィスプリンティングを融合して提供

 リコーは2021年4月から社内カンパニー制を導入しており、オフィスサービス事業はリコーデジタルサービスビジネスユニットが担当。同時にオフィスプリンティング事業の販売とサービスも、同ビジネスユニットが担当している。

 リコー デジタルサービスビジネスユニットの大山晃プレジデントは、「オフィスサービス事業と、オフィスプリンティング事業の対象は同じ顧客となる。同じお客さま基盤において、2つの事業を融合することがリコーデジタルサービスビジネスユニットの戦略的意義だ。世界50カ国、140万社以上のオフィスプリンティングの顧客に対して、約1万5000人の営業、1万6000人のエンジニアが、現場の業務課題やドキュメントのワークフローに関するきめ細かな対応を行っている点が強み。スクラムパッケージをはじめとする自社のアプリケーションやパートナーのアプリケーション、400万台の実績を持つ多機能MFPなどのエッジデバイスを組み合わせ、サービスインテグレータとして、顧客の業務課題の解決、事業の成功に役立ちたい」とした。

デジタルサービスビジネスユニットの戦略的意義
リコー デジタルサービスビジネスユニットの大山晃プレジデント

 オフィスサービス事業の2022年度の営業利益目標は、2020年度比で270億円増を目指しており、2021年度上期で74億円増を達成して順調に推移しているという。

 そのうち「提供価値の拡大」では、2022年度に110億円増を計画し、上期には25億円増を達成。「日欧への積極投資により、インテグレーション能力の向上、ストックビジネスにつながるソフトウエアのラインアップの強化を図った」とした。

 また、「取引顧客の拡大」では2022年度に160億円増を目指し、上期には49億円増を達成。「日本のスクラムパッケージや、欧州のいつでもどこでも働けるWork Together, Anywhereなどのパッケージによる展開に加え、買収で獲得した能力を連携し、汎欧州ベースの顧客獲得が進んだ」とした。なお、オフィスサービス事業の2021年度第2四半期の営業利益率は8.2%となり、同四半期としては過去最高を記録している。

 なお、オフィスサービスにおけるストック売上比率は、2022年度に45%を目標としているが、2021年度上期では39.5%となり、計画に向けて順調に拡大している。「ITサービスやアプリケーションといったアニュイティ(annuity:年額課金型)型ビジネスの比率が大幅に伸長し、ストック売上比率の向上につながった」という。

目標に向けた進捗

 中期成長シナリオでは、フェーズ2の「個の強みの極内展開」から、フェーズ3の「極を超えた強みのグローバル展開」へシフトしたと述べ、アセットの集約化や、グローバル案件の対応力強化、グローバルレベルのパートナーアライアンスの強化のほか、DocuWareのグローバル展開によるシナジー創出、新しい働き方を実現するためのサービスの展開、グローバル共通のサービス提供基盤であるRSI(Ricoh Smart Integration)の活用、MicrosoftやCiscoといった企業とのグローバルパートナーアライアンスの強化などに取り組んでいることを示した。

中期成長シナリオ:フェーズ2・3にフォーカス

 DocuWareは、2019年に買収して以降、欧米中心の展開を拡大。リコーの販売会社がある50カ国のうち、45カ国で販売体制およびサポート体制を構築。800人以上のリコー社員が、DocuWare人材として活躍しているという。

 「コロナ禍のリモート環境下で、業務ワークフローをクラウド上に構築し、円滑に業務を行いたいという顧客ニーズが顕在化したことで、DocuWareは非常に好調である」とする。

 また2021年10月にバージョン7.5をリリースし、ERPや電子サインシステムなどの他社アプリケーションとつなぐ機能を強化。日本では、2022年1月に予定されている電子帳簿保存法の改正が、DocuWareの販売に追い風になると見ている。

DocuWare

 このほか、新たな働き方提案に関しても、グローバルで成果が上がっているという。

 具体的には、リコーのコミュニケーション製品とサービス、Microsoft Teamsなどを組み合わせたオフィスのワークプレイス設計や構築サービスを、20社以上のグローバル大手企業に提供。「グローバルのオフィスを統一した仕様で展開するために、1社に任せたいというニーズにリコーが応えることができている」とのこと。

 さらに、欧州で開発したワークプレイスマネジメントソリューション「Ricoh Spaces」が、販売から1年半で欧州の約60社の企業に導入されているという。Ricoh Spaceは、従業員の安全なオフィスへの回帰を実現するために、座席の予約、会議室予約、利用実績レポート、濃厚接触者の特定などを可能にするSaaSで、リコーグループでも活用し、63拠点、5300ユーザー、300会議室、5000デスクで利用しており、今後、リコーグループ全体で活用することになる。

新しい働き方の提案

7つの変革にチャレンジしているリコージャパン

 日本においてオフィスサービス事業を展開しているリコージャパンでは、2020年度売上高の48%をオフィスサービス事業が占め、2016年度と比較すると売上高で1.4倍、構成比は10%上昇したという。

 法人向けWindows PCの販売シェアでは約10%を占め、Microsoft 365の中堅・中小企業向け顧客数では1位、IT導入補助金採択数では3年連続で1位という実績を持つという。また、2020年度売上高の35%をSI販売が占め、2016年度比で売上高は1.6倍、構成比は11%増になったとした。

 リコーグループでは、「OAメーカーからの脱皮」と「デジタルサービスの会社への事業構造の転換」を掲げており、リコージャパンはそれに向けて象徴的な役割を果たすことになる。

リコージャパンの実績

 リコージャパン 取締役 常務執行役員 ICT事業本部長の木村和広氏は、「リコージャパンは、デジタルサービスプロバイダーとして継続した成長を図るために、7つの変革にチャレンジしている。まずは、業績目標の策定方法と評価項目を2021年度から変更し、顧客別に提供価値レベルを可視化して、顧客数目標を設定。2018年度から職種ごとのプロフェッショナル認定制度を運用しており、知識・実施プロセス・成果に応じて、7段階のプロフェッショナルレベルを判定し、処遇にも反映している。年齢に関係なく、高いスキルレベルによりふさわしい人事処遇を受けることができ、飛び級も用意している」などとした。

人事育成/人事制度
リコージャパン 取締役 常務執行役員 ICT事業本部長の木村和広氏

 またこれまでは、コピー機やソリューションを提供するのは営業、導入後のサポートや機械の修理などはCEが行う分業制を敷いていたが、チームフォーメーションによる顧客接点体制を構築。検討プロセスから運用まで、さまざまな職種によって構成したチームが情報を共有しながら、顧客に寄り添う形で活動を行うようにした。これにあわせて、社内システムも刷新。職種ごとに管理されていたデータベースを顧客軸で統合し、取引情報や困りごとなどを共有するデータベースとして再構築したという。

顧客の状態をチームで共有し、適切なチームメンバーが最適なタイミングで対応

着実に販売を伸ばしたスクラムパッケージ

 さらに開発体制については、リコーのデジタルサービス開発機能をリコージャパンに移管し、アジャイル開発を行っていると述べた。「スクラムパッケージの企画は、各業種を担当する、プロデューサーと呼ぶリコージャパンの社員が担っており、中小企業を訪問して、課題発掘とパッケージモデルの検証を行っている。業種特有の業務フローを把握し、困りごとを見いだし、困りごと解決に最適な商品構成を検討。提案を行い、仮説検証を行った上で、フィードバックしたものをブラッシュアップして製品化することになる。1パッケージを提供するにあたり、約100件の顧客訪問を行っている。顧客の課題解決や価値提供を連鎖させる提案にも注力していきたい」と述べた。

 スクラムパッケージは、2017年下期に発売して以降、着実に販売本数を拡大。2021年9月時点で累計18万本を出荷。前年同期の10万本から大きく成長した。課題解決シナリオ数も154パッケージとなり、前年同期から33パッケージ増加している。

スクラムパッケージの1年間の実績

 2020年度はコロナ禍でリモートワークのニーズが急速に増加。さらにセキュリティソリューションが大幅に伸長したという。特に2020年度下期からは、業種課題解決提案を強化し、前年同期比112%増という高い伸びをみせたほか、販売パートナーへの展開も強化し、ここでも同78%増と大きく伸長した。

 「2021年度上期は、重点業種向けソリューションである業種パックが、前年同期比72%増と大きく伸びている。特に、福祉業や流通業で拡大している。また、共通業務パックのセキュリティパックや、販売、会計、給与関連のバックオフィスパックも堅調である」という。

 従業員4人のある土木建設業では、工事状況や安全管理の報告のために、工事写真撮影・管理のスクラムパッケージを導入。写真管理の業務工数を50%削減し、安全管理などの情報をまとめる施工管理台帳の作成工数も50%削減することができたという。

 「業種別、業務別の課題をとらえ、最適な製品、サービス、サポートを組み合わせたソリューションパッケージを展開していく」と述べた。

 今回の説明会では、スクラムパッケージの顧客カバー率という観点からも説明を行った。

 リコーの約70万社の中小企業顧客に対しては11.4%の顧客カバー率となり、中小企業のMFP(複合機)顧客に対するカバー率は19.9%になったとのことで、「MFPを利用している顧客の約2割に、スクラムパッケージが導入されている。2021年度は業種別展開を強化し、約1700社の未取引顧客に対して新規導入した成果もあがっている。また、スクラムパッケージ導入済み顧客へのクロスセルを進めており、顧客あたりの導入本数は平均2.1本になっている」とした。

スクラムパッケージの顧客カバー率

中堅企業向けの「スクラムアセット」も伸長

 一方、年商50~500億円規模の中堅企業向けソリューション「スクラムアセット」は、2021年9月時点での累計販売件数が5400件となり、この1年で3400件も増加したという。

 リコージャパンの約1300人のSEが経験したアプリ導入、展開、運用ノウハウなどの事例をアセット化し、最新技術と組み合わせたソリューションとして提案。最小限のカスタマイズを行いながら課題解決を行うのが特徴で、働き方改革やセキュリティ、バックオフィス、特定業種向けに79モデルを展開している。

 「スクラムアセットのニーズが特に高いのは、『ひとり情シス』といわれる情報システム担当者が企業内に1人しかいない中堅企業や、情報システム担当者が不在の中堅企業。中堅企業の約35%がこれに該当する。これらの企業は、システム構築や運用、セキュリティなどに多くの課題や困りごとを抱えており、情報システム担当者不足に対応したソリューションやサービスに関心が集まっている。今後、業種業種モデルを拡充し、スクラムアセットの実績拡大につなげたい」とした。

スクラムアセット

 損害保険会社における業種モデルの導入では、メールやFAXで届いた調査依頼書を手作業でシステムに登録していたが、これをOCR処理して自動でPDFファイル化。DocuWareと連携させることで、調査依頼書の一元管理やワークフローの自動化を実現しており、1カ月あたり100時間の工数削減につながったという。

スクラムアセットの事例

MFPの顧客をデジタルサービスの顧客へ

 リコージャパンの木村氏は、中小企業や中堅企業では、受発注業務にFAXやメール、電話を使っている企業が大半を占めていること、DXにまったく取り組んでない企業が、従業員数300人以下では49%、1000人以下でも29%を占めていること、大手企業でも基幹業務システムの前後にある、人が介在する業務を簡素化したいというニーズが大きいことを指摘しながら、「MFP顧客をデジタルサービス顧客化し、約90万台のMFPのMIF(Machines In the Field)を再価値化することが、リコーのデジタルサービスの基本戦略になる。企業間取引や企業内文書のデジタル化と自動化で、顧客のDXを支援していく」と述べた。

中小・中堅企業の現状
デジタルサービスの基本戦略

 ここでは、MFP顧客へのスクラムパック、スクラムアセットの導入を継続的に強化。導入率をさらに向上させることを目指す。これにより業務フローの自動化を行い、紙が媒介するデータ入力の工数を削減。さらに各種業務アプリケーションをつなぎ、一連のプロセスを自動化して、業務の省人化を図り、人でしかできない業務に人材をシフトすることを支援するという。

 例えば、企業内にあるさまざまなドキュメントを複合機でスキャンし、OCR処理などによって自動的に内容を判別し、それぞれのシステムに自動登録する。請求書の場合には、AIが請求書に記載された情報を自動認識し、会計システムに自動登録するといった仕組みにより、業務の省力化、自動化、生産性の革新を図ることで、人材の戦略化を支援できるという。

 また介護や福祉の現場では、ベッドに取り付けられたセンサー情報を取得して、利用者の離床状況やベッド上の状態をリアルタイムに通知。活動履歴や記録情報は、介護システムにあわせたデータ形式に変換し、システムに自動登録することで、いままでは現地で確認しないと分からなかったことが、どこにいてもリアルタイムで状況を把握可能になるため、巡回回数の減少やヒヤリハットの軽減、介護担当者の負担軽減に貢献できるとした。

 さらに、以前からの協業パートナーに加えて、全国の信用金庫や地方銀行、商工会議所と連携して、中小企業や中堅企業の業務のデジタル化促進や生産性革新を行うことで、地域の活性化、地方創生に貢献する考えも示した。「新規顧客へのアプローチにもつながる取り組みになる」としている。

欧州における取り組み

 一方、リコーの欧州における取り組みについても説明した。

 Ricoh Europeは、英国ロンドンおよびオランダに本社を置き、欧州全域と中東(ドバイ)、南米(ヨハネスブルグ)に25社の販売会社、16社のリース会社を展開。255社のディストリビュータを通じた販売も行っている。3200人の営業部門、4800人のカスタマエンジニアを擁している。

 2020年度の売上高は前年比27%増の1236億円で、2021年度は26%増の1559億円を計画。2022年度には1676億円の売上高を見込んでいる。「コロナ禍でも高い成長を遂げている。特に、DocuWareによるアプリケーションサービスは2021年度には46%増となっている。サブスクリプションなどのアニュイティ型ビジネスも16%増の成長を遂げている。オフィスサービスの構成比を50%以上に拡大することを目指しているところだ。地理的なカバレッジはほぼ完了しており、遅れているフランスでの体制を強化しているところである。今後、いくつかの買収を進め、成長を続けていく」(Ricoh Europe PLCのDavid Mills CEO)とした。

欧州におけるオフィスサービス事業の成長
Ricoh Europe PLCのDavid Mills CEO

 Ricoh Europeでは、積極的な買収が成長の原動力となっており、2019年のDocuWareの買収がその最たるものだ。2021年にはオランダのAvantageを買収し、オフィスサービス事業の構成比を16%から33%に引き上げるなど、ここ数年で11社の買収を完了している。

 ドイツのDatavisionは、Microsoftのゴールドパートナーを獲得しているシステムインテグレータであり、2020年9月に買収。すでに、リコーとのシナジーにより、3件のグローバルカンパニーの大型商談を獲得。1社あたり300万ユーロに達するビジネスも発生しているという。

 一方で、パッケージソリューションでも成長を遂げており、DocuWareによるプロセスオートメーションの提案のほか、ワークプレイスマネジメント、オフィスプリンティング、テレワーク、サイバーセキュリティ、クラウドインフラ、コラボレーション、スマートロッカーを重点領域として展開。「中でもDocuWareが、アニュイティ型ビジネスを牽引することになる」などと述べた。

 また、DocuWareを中心にしたデジタル人材を育成するデジタルアカデミーを通じて、2022年度には約300人を育成するほか、オフィスプリンティングのエンジニアをデジタルサービスなどの人材に移行するテクニカルアカデミー、販売スキルを向上させるセールスアカデミーを実施していることに触れながら、「粋性した人材を活用し、スマートロッカーの販売、サードパーティ製品のメンテナンス、ロボットによるライフサイクルマネジメントの提供といった新たな市場にも積極的に取り組んでいく」とした。

 さらに、「リコーは、欧州市場における強固な顧客に対してオフィスサービスを提供し、市場全体をカバーできる強いポジションにいる。買収して企業とのシナジー効果も発揮できている。今後も急成長している領域に継続して投資を行っていく」と述べた。

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