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Monday, July 11, 2022

(社説)安倍氏の警備 「失態」検証し説明せよ:朝日新聞デジタル - 朝日新聞デジタル

 元首相が選挙の街頭演説中に狙撃され死亡するという衝撃的な事件だ。要人警護にあたる警察当局全体の、取り返しのつかぬ失態であるのは明らかだ。

 政府は、このような結果を招いた原因を徹底的かつ速やかに究明・検証し、その結果を国民に説明する責任がある。

 今後の業務への支障を理由に警察は当日の態勢などの情報を明らかにしていない。だが残された映像や目撃者の話から、いくつもの疑問が浮かぶ。

 まず演説場所の設定だ。安倍元首相は全方位から見渡せる、奈良市内の駅前の路上で襲われた。聴衆と一定の距離が保てて見通しがきく大型の選挙カーは用意されず、背後を車が行き交う。県警と自民党側とで事前にどんな協議が行われたのか。

 容疑者の男が車道に歩み出て近寄ってきても制止される様子はなく、最初の発砲があった後も、警護員らは直ちに安倍氏を守る行動をとっていない。要員の適切な配置、任務の明確化、そして日ごろの訓練は、どこまでできていたのだろう。

 安倍氏の来県は事件前日の夕方に決まった。県警は急きょ警備計画をつくり、鬼塚友章本部長が承認した。これから警察庁とともに「問題点」の洗い出しを進めるというが、その警察庁も、長官以下、厳しく責任を問われるべき立場にある。公正・公平な検証ができるよう、作業には第三者の目をとり入れる必要があるのではないか。

 首相在任中の安倍氏の街頭演説に抗議の声をあげた市民を、その場から排除した北海道警の措置を違法とする判決が、この春言い渡された。それが影響したと見る向きが一部にあるが、状況は全く異なる。政治に対する言論による異議申し立てと、無法な暴力とを混同するようなことはあってはならない。

 様々なメディアが普及しても、街頭での活動は市民と政治とを結ぶ貴重な機会だ。だからこそ政治家も大切にする。その場の安全の確保を大前提に、自由な交流や議論をいかにして保障し、実現するか。警察にとどまらず、事件が社会に突きつけた重い課題である。

 容疑者は調べに、母親が宗教法人・世界平和統一家庭連合(旧・統一教会)に入信し、献金で生活が破綻(はたん)した、そこで同教会と接点のある安倍氏を狙った旨の供述をしているという。団体の会長はきのう会見し、母親が会員であると認めたが、安倍氏については「(団体の)運動に賛意を表明していた」と述べるにとどまった。

 経緯がどうあれ、銃撃を正当化する理由にはならないが、世界も注目する事件だ。深部にまで踏み込んだ解明が待たれる。

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