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Sunday, August 28, 2022

原発政策転換 丁寧な説明を求める | | 論説 - 佐賀新聞

 政府は将来的な電力の安定供給に向けて次世代型原発の建設、原発の運転期間の延長を検討する方針を打ち出した。合わせて来年以降には、新規制基準に合格している7基を追加で稼働させることも目指すという。正式に決定されれば、原発の新増設やリプレース(建て替え)はしないとしてきた東京電力福島第1原発事故以来の政策を百八十度転換することになる。

 自民党は電力需給逼迫を受け、参院選の公約に「安全が確認された原子力の最大限の活用を図る」とは盛り込んでいた。しかし今回は新増設が柱になっており、公約からは大きな飛躍があると言わざるを得ない。

 政府は年末までに結論を出す方針というが、拙速は許されない。まずは秋に見込まれる臨時国会で丁寧な説明を求めたい。加えて徹底的な情報公開が不可欠だ。

 日本は福島第1原発事故を経験し、その反省から安全確保を最優先し、徐々に原発依存を低減していくことを基本にしてきた。

 脱炭素化を達成するための化石燃料使用の抑制、ロシアのウクライナ侵攻による原油、天然ガス相場の高騰など厳しい環境が続いているが、だからといって、原発事故を契機にした基本姿勢をゆるがせにしてはならない。

 脱炭素化と安定供給の両立は達成しなくてはならない命題だが、その解決策として原発の積極活用にかじを切るのは安易ではないか。原発には使用済み核燃料の処理など課題が山積しており、その解決が見通せない中で、軸足を原発に移すのは危うい。

 原子力規制委員会の審査に合格した原発は17基あるが、このうち東電柏崎刈羽6、7号機(新潟県)など7基は地元同意や安全対策工事の遅れで1回も稼働できていない。岸田文雄首相は「政府が前面に立つ」と強調したが、地元の意向は尊重されなければならない。電力会社や政府への不信感を払拭することが最優先課題だ。

 運転期間は原則40年と定められ、規制委が認めれば1回に限り最長20年延長できるルールだが審査に伴う稼働停止を運転期間に算入しないことで実質的に延ばすことを検討するという。

 極度の電力需給逼迫に見舞われたり、ウクライナ危機などで世界のエネルギー状況がさらに厳しくなり、天然ガスが安定して確保できなくなったりすれば、延長が一時的に必要になるかもしれない。だが、それはあくまでも例外ととらえるべきで、恒久的な枠組みにしてはならない。

 これまで維持してきた「新増設やリプレースはしない」方針を維持していけば、原発はいずれなくなる。この間に効果的な省エネシステムを構築し、太陽光などの再生可能エネルギーを拡大することが国民的コンセンサスに近いのではないか。

 原発新増設を打ち出した「GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議」で検討するべき優先課題は、原発回帰ではなく、再生エネの弱点を克服するための官民を挙げた取り組みを促す社会経済改革だ。

 太陽光などによる発電を余すところなく活用できるようにするための送電網や蓄電池の技術革新が緊急課題だ。公的資金投入や人材育成に全力を挙げたい。この技術で強みを持てば世界市場でも存在感を高めることができる。(共同通信・高山一郎)

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