県が3月に公表した最大クラスの津波浸水想定の住民説明会が今月から沿岸部の自治体で始まった。今回の想定での最大津波高は29・5メートル。東日本大震災の津波に匹敵する新たな津波想定に住民からは困惑の声も聞かれた。県は避難のための最悪の想定だとして冷静な受け止めを求め、各自治体は避難所の見直しやハザードマップの改定を急いでいる。(菊池宏一郎、冨田駿)
■浸水域「寝耳に水」 「大震災でも津波は来なかったのに、浸水域に入ったのは寝耳に水だ」。大槌町末広町の町文化交流センターで21日夜に開かれた住民説明会。参加した阿部義晴さん(72)は戸惑いを隠せない様子だった。
阿部さんが自治会長を務める臼沢地区は海岸から2キロほど内陸にある。2020年に内閣府が公表した日本海溝沿いの巨大地震で発生する津波想定でも浸水しないことになっていたが、今回、浸水域に入った。また、町内では震災後、中心部で土地のかさ上げが行われてきたが、そのかさ上げ地でも浸水が想定された。説明会の冒頭では平野公三町長も「震災後のまちづくりが根底から崩された思いだ」と困惑を口にした。
こうした不安に説明会では、県河川課の担当者が「想定外をなくすための最悪の数字で、避難を軸としたソフト対策を促すもの」と説明し、理解を求めた。その上で、ソフト対策では、避難所や避難経路の見直しが必要になるとした。
説明会後、阿部さんは自主防災組織をつくる必要性を感じたといい、「避難経路や一時避難場所の確保を進めたい」と語った。町では役場の建物も最大6・9メートル浸水するとされており、平野町長は「被災後も住民サービスを継続するための役場のあり方を検討する」と述べた。
■生活との折り合い 一方、沿岸部で最高の29・5メートルの津波高が想定された宮古市。18日夜に同市港町の鍬ヶ崎公民館で開かれた説明会では、市の芳賀直樹危機管理監が「どんな想定が出たとしても、命を守るために津波から逃げることが大切」とアドバイスした。
最悪を考えることの重要性を説明する一方で、市内の多くの場所は一時避難場所となる高台や山が近くにある点を強調。非常用持ち出し袋の中身を再確認するなど備えの徹底を求めた。
新想定を受け、各自治体はハザードマップの改定に着手している。宮古市では20年の内閣府の想定を受け、暫定版のマップを昨年1月に作成。今回の想定を踏まえて内容を精査し、今年中の改定を目指す。芳賀危機管理監は「生活基盤を維持しつつ、最悪の場合も命は守れるようにハードとソフトの整備を市民とともに進めたい」と話す。
釜石市も6月以降に説明会を開く予定だ。今回の想定で市街地の避難所2か所が浸水域に入ったほか、新市庁舎の建設予定地が3~5メートル浸水することになり、対応が急務となっている。
ただ、沿岸部では平地が少なく、代替となる避難所や用地の確保が難しい面もある。同市の佐々木道弘危機管理監は「命を守ることを大前提としつつ、日常の生活とどう折り合いをつけていくか。住民の意見を丁寧に聞きながら新想定に向き合いたい」と話した。
からの記事と詳細 ( 津波新想定に困惑の声 「最大29・5メートル」 防災地図改定急ぐ 住民説明会 - 読売新聞オンライン )
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