道内の新たな感染者の報告が300人を超え、自宅療養の患者が増えることが予想されるなか、札幌市では、新型コロナウイルスの重症化を防ぐ薬を患者の自宅に届ける取り組みが始まっています。
国は先月、新型コロナウイルスによる重症化を防ぐ飲み薬「モルヌピラビル」を承認していて、全国の自治体では、医療機関や薬局と連携して自宅療養中の患者に届ける取り組みを始めています。
札幌市では、市内の8つの薬局が今月11日から配達に対応していて、このうち中央区にある薬局には先月28日に3人分の薬が届きました。
「モルヌピラビル」は、発熱外来など、市内170の医療機関で診察や検査を受けた患者のうち、重症化のリスクがあるなど、一定の条件を満たした人に医師が処方します。
薬局によりますと、届いた3人分の薬は処方先が決まっていませんが、発症からなるべく早く服用するのが望ましいため、可能な限り、医師が処方したのと同じ日に配達できるよう準備しているということです。
薬局では、医療機関と細かな情報を共有したうえで、間違いのないよう患者の自宅まで薬を届けて、電話などで服薬指導を行うということで、新しい薬であることから、副反応が出ていないかなど患者のフォローもしていきたいとしています。
薬剤師の大森嵩さんは「服用に際しての注意事項や飲み方に対して抵抗がある患者さんもいるので、そうした負担をいかに軽減できるかも我々の仕事だと思う。感染が広がっていくなか、1人でも多くの方に薬が届き重症化しないようなかたちになればと思う」と話していました。
札幌薬剤師会によりますと、来週17日からは市内260の薬局で対応できるよう準備を進めているとということで、急激な感染拡大に備えたいとしています。
【クリニックの医師は】
国が先月、承認した新型コロナウイルスの飲み薬について、処方にあたるクリニックの医師は、より多くの患者をより早い段階から治療できるようになるとして、大きな期待を寄せています。
札幌市東区にある栄町ファミリークリニックの中川貴史医師は、国が先月、承認した新型コロナウイルスによる重症化を防ぐ飲み薬「モルヌピラビル」の処方に向けて、スタッフとともに手続きを確認するなどして準備を進めています。
中川医師によりますと、「モルヌピラビル」を処方したケースはまだないということですが、処方を通して、患者の治療により積極的に関与できるようになると指摘しています。
関与は処方前から始まるということで、▼感染が判明した場合、検査の実施を決めた医療機関が再び電話で診療などを行い薬を処方すべきかを判断します。
処方の判断の基準となるのは、▼患者の健康状態と、▼発症からの時間、▼それに重症化のリスクなどで、薬の効果があると判断して処方したあとも、▼患者の健康状態を確認していくことになるということです。
中川医師は「入院していない患者にも薬を処方できるので敷居が低くなった。より多くの方々を、より早く治療できる機会ができるので、非常に期待している。より質の高い経過観察、治療つなげたい」と話しました。
その上で、中川医師は「飲み薬は、発症してからできれば3日以内、遅くとも5日以内には投与することが望ましいと言われている。体調の変化を感じたらできるだけ早く医療機関を受診してほしい」と呼びかけています。
【札幌市保健所は】
札幌市保健所は、今回の感染拡大について、すべての感染者に占める重症者の割合が減る一方、軽症や無症状の人が増えているとしていて、自宅療養中の患者に必要な治療をいかに早く届けるかが課題だとしています。
NHKのインタビューに応じた札幌市保健所の高田誉之医療政策課長は、今回の感染拡大について、「ワクチン接種が進み、感染しても重症化する人の割合が減っている。その一方で、相対的に、軽症や無症状の患者が増えている。これに加えて、感染力が強いと言われているオミクロン株が流行した場合には、これまでの第4波や第5波を上回る自宅療養者が出るのではと想定している」との見方を示し、自宅療養の患者に必要な治療をいかに早く届けるかが課題だと強調しました。
その上で、国が新たに承認した新型コロナウイルスによる重症化を防ぐ飲み薬「モルヌピラビル」が自宅療養の患者に対する治療の幅を広げると指摘し、「入院や往診などに加えて、自宅療養の方にも飲み薬を届ける。これまで、発熱外来などの医師たちが使える有効な治療薬はなかったが、この飲み薬が承認されたことで市内にあるクリニックも新型コロナの医療に参加できる体制が整ってきた」と述べました。
高田課長によりますと、自宅療養の患者を巡っては、これまで、医師による往診や電話での診療を除いて、提供できる医療は限られていたということで、「入院や往診などは今後も引き続き重要だが、それに加えて、自宅療養でも経口薬を届ける、また、症状が悪くなってきたときには外来診療もできるなど、いろいろな医療を組み合わせて、すべての患者がより安全に療養してもらえるようにしたい」と述べて、急激な感染拡大の波が来ても医療が破綻することのないよう対策をとっていきたいと強調しました。
からの記事と詳細 ( 札幌市が自宅療養者にコロナ飲み薬 クリニックも治療積極化へ|NHK 北海道のニュース - nhk.or.jp )
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