「桜を見る会」=写真=前日に安倍晋三元首相の後援会が開いた夕食会で、民間企業二社が物品、サービスをそれぞれ無償提供していた。政治資金規正法に違反する可能性がある。安倍氏は把握していなかったのか。説明責任を果たさねばならない。
二〇一七〜一九年の夕食会にサントリーホールディングス(大阪市)が計四百本近い酒類を無償で提供。一九年までに四回会場となったホテルニューオータニ(東京都千代田区)は酒類の持ち込み料を無料にしていた。安倍氏の秘書は、酒類持ち込みは「飲食代金を抑えるため」と供述している。
政治資金規正法は、企業から後援会など「その他の政治団体」への寄付を禁じている。二社の行為は、夕食会の収支を後援会の政治資金収支報告書に記載しなかったとして、同法違反の罪で罰金の略式命令が確定した元公設第一秘書らの刑事記録から判明した。
夕食会費用は出席者一人五千円の会費では賄えず、安倍氏側が補填(ほてん)していた。刑事記録によると、秘書らは補填が公職選挙法が禁じた有権者への寄付に当たる可能性を認識していたが、安倍氏には補填を報告しなかったという。
安倍氏は首相在任中、国会で繰り返し補填を否定したが、補填の事実が明らかになると、一転して「知らなかった」と釈明した。
衆院調査局によると夕食会を巡る安倍氏の虚偽答弁は百十八回に上る。違法の可能性がある補填や無償提供を安倍氏が全く知らなかったというのは、にわかに信じ難い。報告を受けていなくても、国会で問題が追及された後、十分に調査しなかった政治責任は重い。
自民党は先に決めた党運営の指針「ガバナンスコード」に、政治資金の取り扱いに疑念を持たれた議員は「国民に対して丁寧な説明を行う」と明記した。
安倍氏は首相を退いた今も防衛力強化や財政運営を巡り積極的に発言しているが、自らの疑惑に関しても、まずは党のガバナンスコードに従って説明するのが党総裁経験者の責任だろう。都合の悪いことには口をつぐむようでは、身勝手のそしりは免れまい。
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